遺言書に記載のない財産は相続できる?記載漏れの際の対処法を解説
2023年12月20日
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元行政書士のフリーライター。
行政書士・土地家屋調査士の補助者を約10年務めたのち、行政書士として独立。
相続・遺言や農地関係、建設業許可などの業務に携わる。
現在はフリーライターとして、相続・遺言、離婚、不動産関連の記事や資格予備校のコラムなど、日々積極的に執筆活動を行っている。
「誰が読んでもわかる記事」を常に心がけている。
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遺言書に記載のない財産が見つかり、「遺言書に記載のあるものしか相続できないの?」と不安になっている方はいませんか?
遺言書に記載のない財産でも相続が可能です。
しかし、遺言書の効力は記載されていない財産にまでは及ばないため、相続人全員で誰がどのように相続するのかを決定する必要があります。
この記事では、遺言書に記載漏れがあった場合の対処法について解説します。
記載漏れのない遺言書を作成するためのポイントも紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
遺言書に記載のない財産は相続できる?
遺言書に記載のない財産でも相続は可能です。
ただし、相続するためには相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどのように相続するのかを決める必要があります。
遺言書の記載のない財産はいったん相続人全員で共有しますが、いくら相続人であっても共有状態のままでは不動産の相続登記(名義変更)や預貯金の引き出しなどができません。
遺言書から漏れている財産があるとわかったら、できるだけ早く遺産分割協議を行うことをおすすめします。
なお、相続人がひとりしかいない場合は財産を分割する相手がいないため、遺産分割協議は不要です。
遺産分割協議とは
遺産分割協議とは、財産の所有者が亡くなり相続が発生した場合に、どの財産を誰がどのように相続するのかを決めるための話し合いです。
遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があり、決定には相続人全員が合意しなければなりません。
ひとりでも欠けていたり納得していなかったりすると成立しないため注意しましょう。
逆にいえば、相続人全員の合意さえ得られれば、偏った分割方法でも成立するということです。
一定の相続人に最低限保証される財産を指す「遺留分」への配慮は必要ですが、特定の相続人が財産をすべて相続するなど、民法で定める相続割合である「法定相続分」と異なる分け方でも問題ありません。
なお、遺産分割協議に「参加する」とはいっても、相続人全員が1か所に集まる必要はありません。
電話やZoom、LINEなどを用いた話し合いでも可能です。
遺産分割協議書を作成するまでの流れ
遺産分割協議書を作成するまでの流れは以下のとおりです。
- 再度財産調査を行う
- 相続人を確定する
- 遺産分割協議を行う
- 遺産分割協議書を作成する
それぞれ解説します。
1.再度相続財産調査を行う
まず、あらためて相続財産調査を行いましょう。
ほかにもまだ遺言書に記載されていない財産が存在している可能性があるためです。
また、ときには思いもよらなかったものが相続財産に該当することもあります。
相続財産に該当するものには、たとえば以下のようなものがあります。
プラスの財産 | マイナスの財産 |
---|---|
現金 預貯金 不動産(土地、建物) 不動産に設定された権利(抵当権や借地権など) 動産(自動車や骨董品、貴金属) |
借入金 ローン 未払いの税金、医療費 損害賠償債務 保証債務 |
被相続人(遺言者)の遺品の中に、相続財産の手がかりになりそうなものがないか調べましょう。
たとえば不動産なら、毎年4〜5月ごろに自治体から送られてくる「固定資産税の納税通知書」を確認すれば所有している不動産の情報がわかります。
納税通知書が見当たらない場合は、不動産の所在地を管轄する市区町村役場で「名寄せ(なよせ)」を取得すればその市区町村で所有している物件がすべて確認できます。
また、預貯金関係であれば通帳やキャッシュカードはもちろん、金融機関からの郵便物やメールなどもチェックすると把握していなかった口座が見つかるかもしれません。
一方、マイナスの財産についても、郵便物を確認してみましょう。
借入金があるかどうかわからない場合は、全国銀行個人信用情報センター(KSC)に問い合わせるのもひとつです。
2.相続人を確定する
どの段階で財産の記載漏れに気づいたかにもよりますが、まだ相続人調査を行っていない場合は相続人調査をし、相続人を確定しなければなりません。
相続人を調査するためには、まず被相続人(遺言者)の出生から死亡までの戸籍を一式取得します。
そこから配偶者や子どもなど、相続人を一人ひとり拾っていき、相続人それぞれの現在戸籍を取得します。
注意が必要なのは、「相続人全員」を調査しなければならない点です。
たとえば、被相続人の再婚前に生まれた子どもや認知した婚外子など、現在の家族と面識のない相続人が相続人調査によって判明した事例もあります。
そのような場合でも遺産分割協議に参加してもらう必要があるため、連絡を取らなければなりません。
3.遺産分割協議を行う
相続財産と相続人が確定したら、いよいよ遺産分割協議です。
遺言書に記載のない財産を誰が取得するかについて、相続人全員で話し合います。
すんなり決定する場合もありますが、中には意見が対立し、なかなかまとまらないこともあります。
また、遺産分割協議への参加を拒否している相続人がいるために、協議が進まないケースも珍しくありません。
スムーズに進みそうにない場合は、こじれてしまう前に弁護士に相談することをおすすめします。
完全にこじれてしまってからでは弁護士に入ってもらったとしても決着せず、問題が長期化するおそれがあります。
4.遺産分割協議書を作成する
財産の分け方が決まったら、その内容で遺産分割協議書を作成します。
法務局のホームページに見本が掲載されているほか、インターネット上でも様式はたくさん見つかります。
そういったものを活用すれば、作成に慣れていない方でも簡単に作成できるでしょう。
ポイントは、「本協議書に記載のない遺産および後日判明した遺産については◯◯が相続する」といった文言を入れておくことです。
上記の文言を入れておけば、遺産分割後にまた新たな財産が出てきても、次回は遺産分割協議を行わずに済みます。
そのほか、「◯円未満であれば△△が相続する。◯円以上であれば相続人全員で協議した上で決定する」というように、判明した遺産の価格によって対応を変えることも可能です。
できあがった遺産分割協議書に相続人それぞれが署名・押印すれば完成です。
なお、遺産分割協議書に押印する印鑑は実印でなければならないと決まっているわけではありませんが、法務局や税務署、金融機関などでは実印での押印が求められます。
協議内容に「間違いなく本人が同意した」ということを証明するためにも、実印での押印をおすすめします。
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みんなが選んだ終活記載漏れのあった遺言書は有効?
財産の記載漏れがあったとしても、正しく作成されたものであれば遺言書自体は有効です。
そのため、遺言書に記載のある財産については遺言書どおりに相続できます。
ただし、記載内容が曖昧なものや遺言者の署名・押印が抜けているものなど、ケースによっては無効になることもあるため注意が必要です。
記載漏れのない遺言書を作成するためには
記載漏れのない遺言書を作成するためには、実際のところ遺言者ご自身が気をつけるしかありません。
しかし、いくつかのポイントを実践すれば記載漏れを減らすことが可能です。
ここでは、記載漏れのない遺言書を作成するためのポイントを紹介します。
相続財産調査をしっかり行う
遺言書の記載漏れを防ぐには、相続財産調査をしっかり行うことが重要です。
遺言書の中でも、公正証書遺言は公証役場の公証人が作成するため基本的にミスがなく、無効になりにくいというメリットがあります。
しかし公正証書遺言を作成した場合でも、公証人は提出された資料のみを参考に文案を起こすため、たとえ財産が漏れていても気づかれません。
財産が漏れていないかどうかのチェックをしてくれるわけではないのです。
そのため、遺言書を作成する際は財産調査をしっかり行い、すべての財産を洗い出す必要があります。
財産目録を作成する
財産調査の際、財産目録を作成することをおすすめします。
ご自身の財産をすべて完璧に把握できている方は意外に少ないためです。
財産が多い方にとっては大変な作業になりますが、財産目録を作成することでご自身の財産を正確に把握できるため、多くの財産を所有している方こそ作成すべきでしょう。
また、作成しているうちに、「そういえばあれもある」「これもあった」というように、記憶から抜け落ちていたものを思い出すかもしれません。
財産目録に決まった様式はないため自作した様式でも構いませんが、最低限以下の情報を記載する必要があります。
- 財産の種類(「不動産(建物)」「自動車」など)
- 財産の内容や所在(不動産であればその場所、預貯金なら口座の情報など)
- 数量(土地であれば◯筆、車両なら◯台など)
- 価格(取得時の価格や、不動産であれば固定資産課税台帳記載の価格)
なお、プラスの財産だけでなく、借入金やローンといったマイナスの財産についても記載する必要があります。
財産が特定できるように記載する
遺言書に記載する財産は、「どこ」にある「どの」財産なのかなど、その財産であることが特定できるように記載する必要があります。
たとえば、記載すべき財産別の情報は以下のとおりです。
土地 | 所在、地番、地目、地積 |
---|---|
建物 | 所在、家屋番号、種類、構造、床面積 |
預貯金 | 金融機関名、支店名、口座種別、口座番号 |
自動車 | 登録番号、車体番号 |
ただし自筆証書遺言の場合、本文については自筆で書かなければならないため細かい情報まで記載しようとすると書き損じる可能性があります。
ミスをする可能性が高いときは財産が特定できる最低限の情報を記載するか、「不動産をすべて◯◯に相続する」といった書き方をしたほうが安全でしょう。
財産に変更が生じたら遺言書を書き換える
財産に変更が生じたら、その都度遺言書を書き換えたほうがよいでしょう。
現状に合わせて内容を書き換えることで記載漏れを防げるためです。
たとえば遺言書を作成したあとで不動産を購入した場合、遺言書の内容がそのままであれば購入した不動産は宙に浮いてしまいます。
できれば変更が生じた時点で、それが難しい場合でも定期的に内容を見直し、常に最新の状態を保っておくことが理想です。
記載漏れがあっても困らない文言を入れる
いくら気をつけていても、記載漏れを100%防げるとは言いきれません。
記載漏れが生じても困らないように、「その他の一切の財産は◯◯に相続させる」というような文言を遺言書に記載するのもひとつです。
上記の文言が入っていれば、もし財産の記載漏れがあったとしても遺産分割協議をする必要はありません。
ただし「その他」には高額な財産が含まれることがあり、文言を入れたことでトラブルにつながる可能性があります。
また、利用価値のない山林や耕作不可能な農地など、誰もほしがらないような財産も「その他」に含まれるため、記載する際はリスクがあることも知っておいたほうがよいでしょう。
専門家に依頼する
もっとも確実なのは専門家に依頼することです。
遺言書の作成なら弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼した場合、以下のようなメリットがあります。
- 遺言者に負担がかからない
- 相続財産調査を正確に行える
- 遺言書が無効になることを防げる
- トラブルに発展した場合も対応してもらえる
それぞれ紹介します。
遺言者に負担がかからない
弁護士に依頼することで、遺言者に負担がかからなくなるというメリットがあります。
遺言書の作成には時間も労力もかかります。
とくに体調が思わしくないなら、市区町村役場に出向くだけでも一苦労です。
しかし、弁護士に依頼すれば遺言書の作成はもちろん相続人調査や相続財産調査なども行ってくれるため、遺言者が動けない状況でも作業が滞りません。
相続財産調査を正確に行える
相続財産調査を正確に行えるのもメリットのひとつです。
自力で相続財産調査を行った場合、財産を見落としてしまう可能性があるためです。
財産に漏れがあると、遺言書は無駄にならなかったとしても、結局相続人に迷惑をかけてしまったり争いのもとになったりします。
しかし、弁護士であれば相続財産調査を正確に行えるため、トラブル回避にもつながります。
遺言書が無効になることを防げる
遺言書が無効になることを防げるというメリットもあります。
自筆証書遺言を作成する場合、ミスによって遺言書が無効になってしまうおそれがあります。
しかし、弁護士に依頼すれば正しい方法で作成できるため、ミスなどで無効になることはほとんどありません。
トラブルに発展した場合も対応してもらえる
もっとも大きなメリットは、トラブルに発展しても対応してもらえるところです。
遺言書の作成や相続人調査、相続財産調査などは司法書士や行政書士でも可能です。
しかし、遺言者が亡くなったあとなどに相続人同士でトラブルになった場合、弁護士以外の専門家では対応できません。
たとえば弁護士以外の専門家に依頼すると、トラブルが発生した時点で弁護士にバトンタッチする必要が出てくるのです。
はじめから弁護士に依頼していれば、ワンストップで対応できるため二度手間になりません。
まとめ
遺言書に記載のない財産を相続する方法や、遺言書に記載漏れがあった場合の対処法について解説しました。
遺言書に記載のない財産でも、遺産分割協議を行えば相続が可能です。
財産の記載漏れは、記事の中でも解説したとおり相続財産調査をしっかり行うことや財産に変更があったときに遺言書を書き換えることで防げます。
しかし、もっとも確実なのは弁護士に依頼することです。
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