職場でのいじめ、慰謝料は請求できる?相場はいくら?判例とあわせて解説
2023年01月23日
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「職場でいじめに遭った」「先輩や上司からパワハラを受けている」など、いじめ・嫌がらせの相談が増加しています。
職場でいじめ・嫌がらせ被害に遭い精神的苦痛が生じ退職することになった場合、経済的に不安を抱えるかたは多いでしょう。
いじめ・嫌がらせが民法709条の不法行為と推定される場合には、慰謝料請求の訴えを起こすことが可能です。
本記事では職場のいじめ・嫌がらせに関するデータ、いじめ・パワハラ・セクハラ・マタハラとは、慰謝料請求が認められた判例と慰謝料の相場を解説していきます。
記事の要約
- 職場でのいじめ・パワハラは慰謝料請求の対象となる。
- 慰謝料の相場は50~300万円程度。
- いじめ・パワハラの内容や証拠の有無によって金額が異なる。
- いじめ・パワハラを受けた場合は、証拠を収集し弁護士に相談することがおすすめである。
職場での「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が増加中
厚生労働省が公表した「2021年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、2021年の民事上の個別労働紛争は計352,914件に及びます。相談内容の内訳は「いじめ・嫌がらせ」が86,034件(24.4%)で最も多い結果となりました。
職場でのいじめ・嫌がらせの相談件数は、2021年までの直近10年間で急増しています。
個別労働紛争解決制度とは、労働者が都道府県労働局・労働基準監督署などに設置された総合労働相談コーナーに相談し状況に応じて労働局長による助言・指導や紛争調整委員会によるあっせんで解決を図るものです。
いじめ・嫌がらせに対して労働局長による助言・指導が実施されたのは1,689件、紛争調整委員会によるあっせんが行われたのは1,172件です。
「紛争調整委員会のあっせん」とは、弁護士・大学教授など労働問題の専門家が間に入り当事者間の調整を行い、話し合いを促進することにより円満な解決を図る制度です。
ただし労働局長の助言・指導とあっせんは、共に事業者やいじめ加害者に対する強制力はありません。
労働相談窓口に相談し、助言や指導・あっせんを図って解決する事例も存在するでしょう。
しかし筆者が過去に労働相談窓口に相談した際には、助言や指導・あっせんを図っても「その後職場にいづらくなってしまうため、退職して泣き寝入りするケースが多い」と相談員からアドバイスをもらいました。
多くの人が職場でのいじめ・嫌がらせに悩んでいるものの、公的な制度では解決が難しいという現状があります。いじめや嫌がらせがある職場を辞め、慰謝料を請求し資金を確保した上で次のステップに進むという選択肢もあります。
職場でのいじめ・パワハラ・セクハラ・マタハラとは?
厚生労働省のハラスメント対策の総合情報サイト「あかるい職場応援団」によると、職場のパワーハラスメントとは、職場において以下の3つの要素を満たすものと定義されています。
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
③労働者の就業環境が害されるもの
パワハラの種類には身体的な攻撃、精神的な攻撃、過大もしくは過小な要求や人間関係からの切り離し(仲間外れなど)があります。
セクハラは性的な嫌がらせを指すものです。
セクハラの種類には以下のものがあります。
- 対価型セクハラ・・・性的な言動に対して拒否や抵抗をしたことを理由に不利な立場に追い込むセクハラ。
- 環境型セクハラ・・・労働者の就業環境が不快なものとなり支障が生じるセクハラ。
妊娠・出産・育児を理由に女性が職場で不当な扱いを受ける「マタニティハラスメント(マタハラ)」も存在します。
ハラスメント(嫌がらせ)は被害者が不快に感じ業務や生活に支障をきたす行為ですが、線引きが難しいと言われています。法律上ではどのように定義されているのでしょうか?
職場いじめの慰謝料は請求できる?
職場でのいじめ・嫌がらせは被害者の精神的苦痛に対して損害賠償を請求できます。
いじめ・パワハラなどは民法709条の不法行為に該当する可能性があり、同法710条を基に損害賠償ができます。
第710条(財産以外の損害の賠償) 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
民法より
企業に対しては、民法の「使用者責任」と労働契約法の「安全配慮義務違反」に該当する可能性があります。
民法より
労働契約法より
会社の担当者がいじめを認識していながら対処をしなかった場合には、民法415条の「債務不履行による損害賠償」を追求できることもあります。
職場でのいじめ・パワハラ、慰謝料の相場は50~300万円程度
職場でのいじめやパワハラの慰謝料の相場は50~300万円程度となっています。
慰謝料はいじめやパワハラの内容・証拠の有無・いじめによる損害などによって金額が異なります。
実際に裁判で慰謝料が認められたケースを4つ見ていきましょう。
- 安全配慮義務違反で80万円の慰謝料
- マタニティハラスメントで100万円の慰謝料
- 「精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の金額は100万円を下らない」判決
- 「歯間ブラシの掃除をさせられた」パワハラとセクハラで60万円の慰謝料
1.安全配慮義務違反で80万円の慰謝料
2022年3月29日千葉地方裁判所民事第3部判決の事件では、客に指を捻挫させられた従業員Aさんに対して上司がパワハラ的な対応や言動をしたことが問題となりました。Aさんは勤務先の会社を安全配慮義務違反で訴えました。
客の暴行でケガをした従業員Aさんは上司から「それ位我慢しなくちゃ。君は心が弱いよ」と言われ体調が悪化し、ストレス性障害と診断されてしまいました。これまでにも上司はAさんにパワハラと感じられる対応をとっていました。
勤務先の企業は職場環境を調整する義務に違反したとされ「Aさんは著しい精神的苦痛を受けたと認める」「苦痛に対する慰謝料は80万円」と判決がくだされました。
2.マタニティハラスメントで100万円の慰謝料
2018年1月26日岐阜地方裁判所判決の事件は、マタニティハラスメントです。
歯科クリニックに勤める歯科技工士の女性Bさんは、産休・育休の取得により嫌がらせ行為を受け、精神疾患の診断を受けました。
病気を理由に休職したところ、休職事由が休職期間の満了日までに解消されなかったことを理由にBさんを一般退職扱いにしました。他にも有給休暇は取得させない、有給休暇をとろうとしたBさんに暴言を吐くなどのパワハラ行為がありました。
Bさんは「有給休暇を取得すれば,自主退職の形式で退職しなければならない」という説明も受けています。Bさんは退職し、慰謝料100万円と弁護士費用10万円の請求が認められました。
3.「精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の金額は100万円を下らない」判決
2017年12月5日名古屋地方裁判所判決の事件では、裁判長から「原告の精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の金額は100万円を下らない」という判決が下されました。
東証プライム企業の大手不動産会社に営業社員として勤務するCさんは達成不可能なノルマを課せられ、暴言を吐かれた結果精神疾患にかかり退職することになりました。裁判所はパワハラを認めています。
会社に対し使用者責任又は安全配慮義務違反の債務不履行責任に基づく損害賠償として、慰謝料100万円の他に治療費や休業損害・弁護士費用を加えて計167万5273円の支払いが命じられました。
4.「歯間ブラシの掃除をさせられた」パワハラとセクハラで60万円の慰謝料
江戸川区が設置・管理する学校で起きたセクハラ・パワハラ事件です。
非常勤事務の女性職員Dさんは同僚Eから胸の大きさを話題にする、胸を触られるなどのセクシャルハラスメントを受けていました。
また、歯間ブラシを洗わされたりするなどのパワーハラスメントもあり、江戸川区に対して国家賠償法又は職場環境配慮義務の債務不履行、東京都に対しては国家賠償法に基づき連帯で損害賠償を求めました。
セクハラ・パワハラ行為を女性の同僚に相談したところ、同僚Eから「話したのか」と詰問されました。
Dさんはクリニックで適応障害の診断を受け、校長には口外しないよう求められました。
その後も同僚Eと2人で同じ教室で働く環境が続き、適正な措置は取られませんでした。
Dさんには慰謝料60万円と通院費用・弁護士費用が認められました。
セクハラだけではなく、歯間ブラシの掃除に関しても「通常人が嫌悪感を催すと思われる行為を意図せずとはいえさせられた」「社会通念上許容できる限度を超える被害を受けている」と述べられました。
慰謝料請求のポイントは
上記4つの事件で共通しているものとして、被害者が精神疾患にかかるという被害の大きさ、医師の診断書など証拠があるという点です。
また、訴えた相手が加害者ではなく職場である点も重要なポイントです。
正規・非正規といった雇用形態は問わず、被害の度合いや損害の大きさが慰謝料の額を左右することが推定できます。
職場でいじめ・嫌がらせ被害は被害の程度や証拠の有無、「民法709条の不法行為に該当するか」が問題となります。まずは法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。労働問題の実績が豊富な弁護士に対処法や慰謝料の目安などを聞いてみてはいかがでしょうか。
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