私有地で子どもが遊ぶのは不法侵入?対応法などを解説!
2023年01月11日
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予備試験を経て司法試験に合格し、2016年に弁護士登録。
法律事務所での執務のほか、インハウスとしても執務を経験。
現在は独立し、弁護士としての活動に加え、飲食店等に関する事業経営も積極的に行っている。
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近くに住む子どもが私有地の中で遊んでいるとき、その土地の所有者は、どのような対応をとることができるのでしょうか?
コロナ禍で休校になった子どもが道路で遊ぶ「道路族」が話題となりましたが、子どもには公道と私有地の区別が難しく、知らない間に私有地が遊び場となっていることもあるでしょう。
この記事では、私有地で遊べば犯罪になるのか、私有地で遊ぶ子どもへの対応法、土地の所有者が注意すべき点などを解説します。
記事の要約
- 日本の1人当たりの公園面積は他国と比べて狭く、これが子どもが道路や私有地で遊ぶ原因の一つとされている。
- 純粋な空き地での遊びは住居侵入罪としては成立しないが、建物が存在する場合は成立する可能性がある。
- 子どもが私有地で遊び、損害を与えた場合、12歳未満の子どもは民事上の責任を負わない。
しかし、親は監督者としての責任を負うことがある。 - 私有地の管理不足や危険な状態が原因で子どもがケガをした場合、所有者が責任を負うこともある。
道路や私有地で遊ぶのはなぜ?
日本は公園が少ない?
日本の1人当たりの公園の面積は8.7㎡(2004年)であり、1970年の2.7㎡と比べると、公園の整備が進んでいるということがいえます。
しかし、ニューヨークは29.3㎡、ベルリンは27.4㎡、ロンドンは26.9㎡であり、外国と比べると、日本における1人当たりの公園面積は狭いといわざるを得ません。
このように、日本は公園が少ない・狭いということが、子どもが道路などの公園以外の場所で遊ぶ原因の一つとなっているということができるでしょう。
このほか、2000年代後半からは、事故などを理由として公園の遊具の撤去が相次ぎ、子どもにとって公園が魅力的な遊びの場でなくなったり、2007年には、公園での子どもの遊び声が騒音に当たるとする裁判所の仮処分が出たりするなど、時代的な背景も原因となっているものと考えられます。
親の目の届くところで遊ばせたい?
このほかにも、子どもを持つ親の心理として、公園でトラブルに巻き込まれるのではないか、公園までの道中で交通事故などに遭ったりしないかなどという不安・心配があるでしょう。
共働き世帯が増加し、時間的な余裕がなくなり、子どもを遊ばせてあげたいけれどもついていく時間がない、家の前の道路や空き地などの目の届く範囲内で遊ばせれば、家事をしながら子どもの様子も見ることができると考える人も少なくないのかもしれません。
私有地で遊ぶことは犯罪?
住居侵入罪が成立する?
住居侵入罪は、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入」(刑法130条)することで成立します。
この条文から分かるように、住居侵入罪が成立するのは、①住居、②邸宅、③建造物、④艦船に侵入した場合ですので、建物が何もない純粋な空き地に侵入して遊んだという場合、住居侵入罪は成立しないということになります(ただし、これはあくまでも刑事上の問題ですので、これとは別に、民事上の責任を負う可能性はあります)。
これに対し、空き地の中に住宅や倉庫など何らかの建物が存在する場合には、住居侵入罪が成立する可能性があります。
子どもは処罰されない?
建物のある私有地で遊んだ場合、住居侵入罪が成立する可能性がありますが、子どもの場合には、年齢によって刑罰を受けるかどうかが変わります。
刑法41条では、「14歳に満たない者の行為は、罰しない。」と定められていますので、私有地に進入して遊んでいる子どもが14歳未満の場合には、刑事手続きでの処罰を求めるという解決は不可能となってしまいます。
この場合にも、私有地の所有者がとることのできる方法としては、民事上の責任を追及することとなります。
子どもの責任は親に追及できる?
子どもは民事上の責任も負わない?
民法712条が「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」と定めているとおり、子どもが私有地で遊んでいて所有者に損害を与えた場合、民事上の責任を負わないことが原則とされています。
そして、「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったとき」に該当するかどうかは、およそ12歳前後が基準となると考えられています。
したがって、私有地で遊んでいた子どもが12歳未満の場合には、刑事上の責任を追及することもできないし、民事上の責任も追及することができないということになってしまいます。
親の監督者責任とは?
このような不合理な結果を避けるために、民法714条1項は、「責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と定め、被害者の救済を図っています。
すなわち、12歳未満の子どもが私有地で遊んだせいで、所有者に損害が発生した場合、所有者は、その子どもの親権者である親に対して、損害賠償を請求することができるということです(子どもが12歳以上の場合、親の責任を問うことができないというわけではなく、この場合でも、一定の場合には親の責任を問うことが可能です)。
損害賠償を請求された親は、監督義務を尽くしていた、あるいは、監督義務を怠っていなくても損害が発生したいたということを立証しない限り、責任を免れることはなく、親にとっては重い責任が課せられているということができます。
所有者が責任を負う場合もある?
ここまでは、私有地で遊ぶ子どもに損害を与えられたという場面でしたが、これとは逆に、所有者が子どもに責任を負わなければならないというケースもあり得ることに注意が必要です。
たとえば、私有地の中の古い小屋が崩れて子どもが下敷きになったり、私有地の中の用水路に子どもが落ちて溺れたなど、私有地の建物の管理不足などが原因で被害が発生した場合には、その所有者が責任を負うこととなります(この点について、民法716条1項では、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。」と定められています。)。
このような事態が生じた場合、所有者は、勝手に遊ばれていたにもかかわらず、その中で発生した事故については責任を負うという結果となってしまいます。
そのため、私有地の中で遊ぶ子どもを見つけたときには、対応が面倒だからといって放置するのではなく、自身のリスク回避のためにも、遊ばなくなるまで注意などを行う必要があるといえます。
なお、事故が起きれば、常に所有者が必ず責任を負わなければならないというわけではありません。
所有者の保存や管理に何ら問題がなかった場合には、所有者が責任を負うことはありません。
また、「立入禁止」の立て看板や侵入防止用の柵を設置していたにもかかわらず、それを無視して子どもが遊んでいたというケースでは、子ども側の過失が認められ、相当程度の過失相殺がなされるものと考えられます。
私有地で遊ぶ子どもへの対応法は?
近隣であれば話合いを
以上は法律関係についてでしたが、「法律問題にまでは発展していない」「今後の近所付き合いもあるので大げさにしたくない」という方も少なくないと思います。
また、私有地が子どもの遊び場となってしまったという場合、全く見ず知らずというケースもあるでしょうが、多くは、近くに住む子どものことが多いでしょう。
このような近隣トラブルにおいては、いきなり訴訟を提起するなどという解決方法を選択するよりも、まずは話合いをするという方が適切であることが少なくありません。
感情的にならず冷静に、どのような行為でどのように困っているのかなどを具体的に説明し、今後は控えてほしいということを伝えてみるべきでしょう。
町内会などへの相談も検討する
当事者同士だけで話合いをするのは不安だという場合には、町内会や町内会長などの役員に相談することも検討すべきであるといえます。
注意喚起の回覧を回してもらったり、第三者として間を取り持ってもらったり、行政につないでもらったりすることを期待できます。
弁護士名義での書面を作成する方法も
話合いや町内会への相談もしたけれども状況が変わらないという場合には、弁護士の作成した書面を送付して、今後は立ち入らないように警告したり、弁護士を代理人として相手方と話をして、相手方と合意に至った内容(たとえば、今後、立ち入るごとに違約金を支払う、など)を書面化するといった方法も考えられます。
弁護士に依頼すれば必ず法的手段をとらなければならないというわけではなく、代理人として相手との話合いや交渉を行い、妥結できた内容を書面に残すという依頼の方法も可能です。
まとめ
私有地で遊んでいる子どもについては、その年齢にもよりますが(刑事責任は14歳以上、民事責任はおおむね12歳以上)、住居侵入罪が成立したり、民事上の責任を追及することが可能です。
また、子どもの行為に対しては、その親に対して責任を追及することもできる場合があります。
その一方で、私有地に侵入して遊んでいる子どもが私有地の中の建物などによってケガをしたというような場合には、所有者が責任を負うことにもなりかねませんので、放置することは適切でなく、何らかの対応を講じることが必要です。
いきなり訴訟などの法的手段をとる方法もなくはないですが、近隣トラブルの解決には、話合いが望ましいといえます。
当事者だけでの話合いは不安だという場合には、弁護士や町内会などの第三者のサポートも利用して、適正な解決を図りましょう。
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