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サービス残業は違法?根拠や残業代の計算方法と請求方法などを解説!

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サービス残業は違法?根拠や残業代の計算方法と請求方法などを解説!

この記事を書いた人

田渕大介
田渕大介
予備試験を経て司法試験に合格し、2016年に弁護士登録。
法律事務所での執務のほか、インハウスとしても執務を経験。
現在は独立し、弁護士としての活動に加え、飲食店等に関する事業経営も積極的に行っている。

「毎月の残業代が定額で固定されていて、何時間残業しても同じ額の残業代しか支払われない…」、「30分未満の残業代はカットされて支払われない…」、「実際は名ばかり管理職なのに、管理職だからという理由で残業代が一切支払われない…」など、これらはすべて違法なサービス残業です。
サービス残業(賃金不払残業とも呼ばれます)とは、従業員が残業をしたにもかかわらず、残業時間に対応した残業代を会社が支払わないことをいいます。たとえ残業時間が1分であっても、会社はそれに対応した残業代を支払う義務がありますし、従業員には残業代を請求する権利があります。
会社が残業代を支払わないことは、労働基準法37条に違反する違法な行為です。また、残業代を請求する権利は3年間で時効消滅してしまいますので、従業員にとっても、それまでに未払いの残業代をきちんと請求することが必要です。
そこで、今回の記事では、サービス残業が違法である根拠、残業代の計算方法、未払いの残業代の請求方法などを解説します。

記事の要約

  • 労働基準法では、労働者は1日8時間、1週間40時間を超えて働かせてはならないと定められている為、サービス残業は労働基準法違反である。
  • サービス残業で悩んでいる場合は、会社と交渉したり、労働基準監督署に申告したりしましょう。

労働時間は法律で規制されている

労働時間は「1日8時間・1週40時間以内」が大原則

労働時間は、1日8時間・1週40時間を超えてはならないと法律で定められています(労働基準法32条)。これを「法定労働時間」といいます。
法律は、会社が従業員に法定労働時間を超えて労働(=残業)させることを禁止しています。
しかし、会社が一切残業を命じることができないというのは現実的でありません。
そこで、会社が労働組合などと労使協定(=36協定)を締結した場合には、協定の範囲内で、従業員に法定労働時間を超えて残業させることができることができるとされています(労働基準法36条1項)。
※この記事では、法定労働時間を超える残業について解説しますが、パートタイム雇用などで1日の労働時間が8時間以内の方であっても、労働契約で決められた時間を超えて労働した場合には残業代を請求することができます。ただし、法定労働時間を超える残業とは計算方法などで異なる点がありますので、もし、ご自身の残業代が適切に支払われていないのではないかとご心配な場合は、労働問題に詳しい弁護士への相談をお勧めします。

残業に対しては様々な規制が設けられている

このように、36協定の範囲内であれば会社が従業員に残業をさせることが認められますが、長時間労働や過重労働には健康被害などの様々な弊害もあるため、法律では、残業に対して様々な規制が設けられています。
まず、法定労働時間を超えて従業員に残業をさせた場合、会社は、通常の賃金に一定の率を割り増しした割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条)。
また、2018年の働き方改革関連法によって、残業時間の上限は原則として月45時間・年360時間以内とする必要があるなど、残業時間に関する規制が追加されました(労働基準法36条3項~6項)。
これらの規制に違反した会社には、6か月以下の懲役刑や30万円以下の罰金刑が科せられることもあります(労働基準法119条)。

業種・職種・雇用形態によっては法律が適用対象外であることも

ここまで、労働時間に関する法律の規制を紹介しましたが、業種・職種・雇用形態などによっては、そもそも法律の適用対象外であったり、法律が適用されても労働時間の計算方法が特殊であったりすることがあります。
以下に一例を紹介しますが、ご自身に適用される法律の内容を正確にお知りになりたい場合には、労働問題に詳しい弁護士への相談をお勧めします。

  • 家族手当、通勤手当、別居手当、住宅手当、子女教育手当
  • 臨時に支払われた賃金(例:結婚手当)
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:賞与)

また、固定給と歩合給の両方が含まれている場合には、固定給と歩合給のそれぞれについて「所定賃金」を算出する必要があり、計算方法がより複雑になります。

残業時間は従業員が立証する必要がある

次に、残業時間の把握方法を解説します。
労働(残業)時間は会社が把握しているはずだとお考えの方も多いでしょう。
しかし、未払いの残業代を訴訟で請求することとなった場合には、従業員の側で、日々、何時から何時まで働いたか(実際の始業時刻・実際の終業時刻・実際の休憩時間)を、1分単位で、証拠を提出して立証する必要があります。
訴訟にまで発展せず交渉や話合いによって解決しようとする場合でも、より多くの証拠がある方が有利に交渉や話合いを進めることができますので、未払いの残業代があると思われる場合には、残業時間に関する証拠を集めることが重要です。
残業時間を立証するために有利な証拠としては、以下のようなものが考えられます。

  • タイムカード、ICカード、労働時間管理ソフト
  • 入退館記録、警備会社によるビルの鍵の開閉記録
  • パソコンのログイン・ログオフ時刻
  • メールやグループウェアの送信記録
  • タコグラフ・デジタコ(運転記録計)
  • 店舗の開店・閉店時間
  • 勤務シフト表
  • 業務日報・週報
  • 従業員自身が作成したメモ(具体的な業務内容が書かれていればベター)

未払いの残業代を請求した場合、会社からは、以下の時間は労働しているとはいえないから残業時間に含まれないとの主張がなされ、争いとなることが少なくありません。仮に会社からこのような主張があった場合、実質的に会社に拘束されていたから残業時間に含まれるということを説得的に反論しなければなりません。

  • 作業の準備・引継ぎ・後片付けの時間
  • 朝礼、体操、作業服の着替えの時間
  • 仮眠時間
  • 会社外での研修・行事(例:運動会)への参加時間
  • 持帰り残業
  • 遊んでいた・仕事をしていない・勝手に残業していた時間

未払いの残業代の請求方法

残業代請求の方法は大きく分けて3種類

適切な残業代を算出した結果、未払いの残業代があることが発覚した場合、これを請求するための方法は大きく分けて3種類あります。
1つ目は、会社に直接請求する方法です。ただし、うかつに会社に残業代を請求すると、悪質な場合には、会社がタイムカードなどの証拠を破棄・隠匿することも考えられますので、この方法をとる場合には慎重な検討が必要です。
2つ目は、裁判所を利用する方法です。これはさらに大きく2つに分かれ、訴訟を提起する方法と、労働審判を申し立てる方法があります。訴訟と労働審判との一番の大きな違いは、訴訟では会社に付加金の支払(=未払いの残業代と同額の金銭を支払わせること)を命じてもらえますが、労働審判ではこれを命じてもらうことができないという点にあります。
3つ目は、労働基準監督署に対する申告・刑事告訴や、労働局に助言・指導を申し出たり、あっせんを申請する方法です。
どの方法にもメリット・デメリットがあり、どれを選択すべきかを一概に決めることはできません。未払い残業代の期間・金額や、従業員と会社との関係性、今後も同じ会社で働き続けるかどうかなど、個別の事案に応じて最善の方法を選択することが必要です。

時効・遅延損害金・付加金に注意が必要

この他、未払いの残業代を請求するに当たっては、残業代を請求する権利は3年間で時効消滅してしまうこと、未払いの残業代に加えて年3%(退職後に請求する場合には年14.6%)の遅延損害金も請求する必要があること、訴訟を提起する場合には付加金の請求を忘れてはならないことなどにも注意が必要となります。

まとめ

以上、サービス残業が違法である理由、残業代の算出方法、未払いの残業代の請求方法について解説しました。
サービス残業は、法律違反であるのみならず、長時間労働や過重労働の温床にもなっており、働き方改革やライフワークバランスが重要視されている現代において、決して許されるものではありません。
残業代が適切に支払われていないのではないかとの心配がある場合には、速やかに労働問題に詳しい弁護士に相談し、正しい残業代の支払を受け、問題の早期解決を目指しましょう。

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