生前贈与をした場合、遺産は差し引かれるの?
2018年04月1日
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父親の遺産を相続することになった。3人兄弟のうち、長男だけ、商売の資金として、父が生きているうちに相当な金額を受け取っている。長男は、そのことにあえて触れずに遺産分割の話をしようとしているけれど、それは不公平なのでは?
このように、生前の故人から、お金をもらっていた場合は、相続にあたって、どのように取り扱われるのでしょうか。
生前にもらったお金は、特別受益となる
遺言がない場合、遺産は、民法が定める法定相続分の割合で、法定相続人に相続されます。
しかし、法定相続人の中に、被相続人から、金銭をもらった人がいた場合、法定相続分どおりに遺産を分けたのでは、不公平を生じることになります。
このような場合、相続分(相続する財産の割合)の計算において、生前に受け取った金額を差し引くことになります。
これを「特別受益」といいます。
特別受益がある場合の「持戻し」計算
例を挙げましょう。
夫Aが被相続人、相続人は、妻B、子C、子Dの3人、遺産は、預金1200万円とします。
法定相続分は、妻Bが2分の1、子C、子Dは、それぞれ4分の1です。したがって、妻Bが600万円、子C、子Dは各300万円を相続します。
この場合に、子Cだけが、生前、Aから200万円の贈与を受けていたとしたらどうでしょう。
この特別受益は、相続分の計算にあたり、Aの残した遺産に含めて計算します。
具体的には、Aの遺産1200万円に、特別受益200万円を加えて、1400万円が遺産であると計算します。これを特別受益の「持戻し」と呼び、1400万円の遺産は、「みなし相続財産」と呼びます。
次に、みなし相続財産に、各相続人の法定相続分を乗じます。
妻Bは、1400万円☓2分の1=700万円
子Cと子Dは、1400万円☓4分の1=350万円
ただし、子Cは、すでに200万円の特別受益を受けているので、ここから200万円を差し引きます。
子C 350万-200万円=150万円
結局、遺産1200万円の配分は、次のとおりになります。
妻B 700万円
子C 150万円(ただし、生前贈与200万円は、そのまま有効)
子D 350万円
このように、特別受益にあたる贈与は、それも含めたものが遺産(みなし相続財産)であるとして、持戻し計算の対象とされるところに特徴があります。
特別受益にあたる例
民法は、特別受益となる生前贈与の例として、「婚姻、養子縁組のため、若しくは生計の資本として」贈与を受けた場合と定めています。
「婚姻、養子縁組のため」とは、いずれも親から独立して生活を始める資金です。
「生計の資本」とは、商売を始めるための開業資金などです。
もっとも、特別受益は、相続人間の公平を図るための制度なので、これらに該当しない場合でも、一部の者が特別な利益を受けていたときは、特別受益に該当するものとされています。
特別受益であっても、持戻し計算をしなくても良い場合
ただし、このような特別受益がある場合でも、被相続人が、その相続人に対して、あえて相続とは別個に利益を与える意思であったには、その意思を尊重して、持戻し計算はなされません。
これを「持戻し免除の意思表示」と呼びます。
この意思表示は、遺言で行うことができますが、遺言がない場合でも、生前贈与時の具体的事情から、被相続人の持戻し免除の意思を認定する場合もあります。
まとめ
生前に金銭の贈与を受け相続人がいる場合は、特別受益として、持戻し計算の対象となることを説明しました。
贈与を受けていた相続人は、自らは利益を受けていたことを言い出さないものです。
他の相続人が黙っていれば、そのまま不公平な相続が行われてしまいます。
生前贈与の事実があった可能性がある場合は、相続のプロである弁護士に相談されることをお勧めします。
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