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犬が他人に噛みつきケガをさせてしまったときの対処法

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犬が他人に噛みつきケガをさせてしまったときの対処法

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トラブルが起きた時でも対応できるようトラブルの対処法や、もしもの時に弁護士保険が役立つことを記事でお伝えできたらと思います。

「飼っている犬が、近所の子どもに噛みついて怪我をさせてしまった」
「治療費や慰謝料を払ってほしいと言われているけれど、どこまで支払えば良いの?」

犬を飼っていると、犬が他人に噛みついて怪我をさせてしまうケースが多々あります。
環境省が発表する「動物愛護管理行政事務提要(令和4年度版)」によれば、犬が人を噛んでケガをさせた咬傷事故は、令和4年には4423件発生しました。そして、被害者の多くは、飼い主やその家族以外の第三者で、事故の状況は、公共の場所で散歩させている最中が多いとのことです。

このように、飼い犬が噛みついて他人にケガをさせた場合、飼い主としてはどこまでの賠償義務に応じるべきなのでしょうか?

今回は、犬が他人に噛みついて怪我をさせてしまった場合の対処方法について、解説します。

記事の要約

  • 被害者の応急処置が最優先。
  • 被害者へのお詫びと損害賠償の交渉は誠実に行う。
  • 24時間以内に保健所へ届出を必ず行う。届出を怠ると罰則の対象となる場合がある。
  • 犬の診察と行動の観察で再発防止を図る。

飼い主に発生する「動物占有者の責任」とは

飼い犬が他人に噛みついて怪我をさせた場合、飼い主には被害者に対する損害賠償責任が発生するケースが多いです。民法第718条において「動物占有者の責任」が定められているからです。
動物占有者の責任と言われても、初めて聞いたという方が多いでしょうから、以下でご説明します。

動物占有者の責任とは

「動物占有者」とは、動物を自分の支配下に置いている人のことであり、ペットの飼い主は通常動物占有者に該当します。また、飼い主からペットを預かっている動物の「保管者」も動物占有者責任を負います。
法律上、動物占有者は、その動物が他人に与えた損害を賠償すべき責任を負うことになっています。そこで、飼い主が散歩をするときに、犬が他人に駆け寄っていて噛みついたケースや、他人が犬を触ってきたので「どうぞどうぞ」などと言っていると犬が他人に噛みついた場合などには、飼い主に責任が発生する可能性が高くなります。

例外的に責任が発生しないケース

ただし、犬が他人に噛みついても、飼い主に動物占有者責任が発生しないケースもあります。民法は「動物占有者が相当な注意を払って動物を管理していた場合には、責任を免れることができる」と規定しているからです。
つまり、きちんと注意して犬を管理していたことを証明できたら、損害賠償責任が発生しないということです。
たとえば飼い主が、犬を自宅の敷地内につないでフェンスなども立てて外から入れないようにして管理していたにもかかわらず、勝手に子どもフェンスを乗り越えて進入してきて犬にいたずらをしたために噛まれたケースなどでは、飼い主の責任が問われない可能性があります。

損害賠償の内容

噛みつきそうな犬

それでは、飼い主に損害賠償義務が発生する場合、具体的にどのような賠償金を支払う必要があるのでしょうか?
●治療費
●雑費
●付添看護費用
●休業損害
●傷害慰謝料
●後遺障害逸失利益
●後遺障害慰謝料
以下で、それぞれについてご説明します。

治療費

まずは治療費を支払う必要があります。被害者が通院したときにかかった診療費、検査費用、投薬料などが全額賠償の対象となります。

通院交通費

通院交通費としては、被害者自身の入退院や通院に必要なものについて、実費相当額が認められます。
タクシーの利用が相当と認められる場合には、タクシー代が認められますが、そのような相当性がない場合は、電車やバス等の公共交通機関の運賃を基準として認められることとなります。

入院雑費

被害者が入院した場合には、入院雑費として1日当たり1500円程度の支払いが必要となります。
雑費とは、入院中の日用雑貨費(寝具、衣類等)、通信費(電話代等)、文化費(新聞代、テレビ賃借料等)等、入院することによって生じた諸々の費用のことをいい、被害者が個別に立証する必要はありません。

付添看護費用

入院や通院のための付添看護費は、医師の指示があった場合、症状が重篤であるなど受傷の部位・程度によって付添の必要性が認められる場合、被害者が年少者である場合などに認められます。1日当たりの基準額は、入院への付添いで6500円前後、通院への付添いで3300円程度です。

休業損害

休業損害とは、被害者が事故による受傷により、治療又は療養のために休業あるいは不十分な就業を余儀なくされたことにより、得べかりし収入を得ることができなかったことによる損害である。
休業損害は、事故による傷害が治癒し又は症状が固定した時期までの間に、受傷のために休業したことにより得ることができなかった額につき認められる(症状固定時以降は、後遺障害逸失利益となる。)。

傷害慰謝料(入通院慰謝料)

相手が怪我をして治療を受ける場合には、治療日数に応じた傷害慰謝料が発生します。
金額は、治療期間が長くなるほど高額になります。例を出すと、通院1か月で27万円、通院3か月で73万円程度となります。入院すると、さらに増額されます。

後遺障害逸失利益

犬が相手に噛みついたことによって被害者に後遺障害が残ってしまったら、「後遺障害逸失利益」という損害が発生します。これは、後遺障害が残ったことにより労働能力が低下して、将来得られなくなってしまった減収分の損害です。被害者が子どもの場合などでも逸失利益が発生します。
後遺障害の程度が重いと逸失利益の金額も高額になり、数百万円を超えるケースも珍しくありません。

後遺障害慰謝料

被害者に後遺障害が残ってしまったら、慰謝料も高額になります。最低でも110万円程度、高額なケースでは2000万円を超えるケースもあります。特に相手が小さい子どもや高齢者などの場合、ダメージが大きくなって後遺障害も残りやすいので注意が必要です。

犬が他人に噛みついたときの賠償金総額はケースによっても異なりますが、軽いケースで数十万円程度、重いケースでは数百万円、一千万円を超えるケースも出てきます。

被害者に過失がある場合

ただし、被害者に過失がある場合には、賠償金が減額されます。たとえば幼児が犬に噛まれた場合でも、近くに犬がいるのに親が子どもを放置していた場合などには被害者側にも過失がみられるので、過失相殺によって賠償金が割合的に減額される可能性が高いです。また、犬が嫌がっているので飼い主が注意を促しているのに、被害者がしつこく犬をかまったために噛まれたケースなどでも、大きく過失相殺されるでしょう。
たとえば損害額が500万円のケースにおいて、被害者の過失割合が4割ならば、支払うべき賠償金は300万円(500万円の6割)となります。

ペットを飼っている場合には、ペットが他人を傷つけるリスクに配慮しておく必要があります。もしものときのために、個人賠償責任保険特約つきのペット保険や弁護士保険などに入っておくと良いでしょう。

被害者に過失がある場合

ここまでは、民事上の責任についてお伝えしましたが、これとは別に、犯罪が成立し、刑事上の責任を負う可能性もあります。
犬が他人に嚙みついてケガをさせてしまった場合には、過失傷害罪(刑法209条)が成立する可能性があります。
過失傷害罪に問われれば、30万円以下の罰金又は科料の刑が科されます。
ただし、過失傷害罪は、被害者が告訴をしなければ起訴されない親告罪ですので、被害者と示談を成立させ、告訴しないことを約束してもらうことが適切であるといえるでしょう。
なお、犬が他人のペットに嚙みついてケガをさせてしまった場合には、刑事上の責任を追及されることはありません。
法律上、動物は物として扱われ、物を壊したときに成立する器物損壊罪は、故意がなければ成立しないからです。
ただし、他人の物を壊してしまっていますので、民事上の責任を追及され、損賠賠償を請求される可能性は残ります。

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