会社都合退職で得をできる?従業員・会社から見たメリット・デメリットとは
2022年09月3日
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会社の退職方法には「会社都合退職」「自己都合退職」の2種類があります。選んだ手続きによって失業給付金の給付期間や履歴書への記載事項などに違いが生まれることから、退職後の生活に影響を与えることも考えられます。
それぞれの手続きにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。今回は会社都合退職のメリット・デメリットについて、従業員と会社側双方の視点から解説します。
記事の要約
- 会社都合退職は、失業保険の受給期間や給付額が有利になるなどのメリットがある。
- 会社都合退職になるためには、会社側の都合で退職を命じられ、退職に応じた場合、失業保険の給付対象となる。
- 会社都合退職は、従業員にとって有利な退職形態だが、会社側にはデメリットもある。
会社都合退職とは
「会社都合退職」は、労働者に責任がなく、会社側の都合による退職を指します。
厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)では、 会社都合退職による失業給付金の受給資格条件を「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」において、「特定受給資格者」の条件を以下のように定めています。
① 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者
② 事業所において大量雇用変動の場合(1か月に30人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職した者
③ 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
④ 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者
① 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
② 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
③ 賃金(退職手当を除く。)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2か月以上となったこと、又は離職の直前6か月の間に3月あったこと等により離職した者
④ 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(又は低下することとなった)ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)
⑤離職の直前6か月間のうちに3月連続して45時間、1月で100時間又は2~6月平均で月80時間を超える時間外労働が行われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
⑥ 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した者
⑦ 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者
⑧ 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記⑦に該当する者を除く。)
⑨ 上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者
⑩ 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)
⑪ 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者
⑫ 事業所の業務が法令に違反したため離職した者
会社の倒産、事業所の廃止
会社都合退職の代表的な理由のひとつに、会社の倒産や事業所の廃止に伴う退職があります。会社側の雇用を続けたくても続けられない事情に伴う退職であるため、会社都合の退職として扱われます。
また、通勤が困難となる事業所等の移転により退職した場合も、会社側の都合による勤務先の消失となるため会社都合退職です。
給料の未払い、支払い遅延
給料(賃金)の支払いが続いた場合も会社都合退職の理由になります。会社都合退職が認められるのは、賃金の3分の1以上が規定の支給日に支払われない状態が2か月以上継続した場合、または離職直前の6か月のうち3か月以上あった場合が対象です。
また、労働者が予見できない理由で賃金が85%未満に低下したことを理由とした退職も、会社都合として認められます。
会社の指示による違法な時間外労働
会社の指示により継続的に長時間労働を強いられたために退職したケースも、会社都合退職に含まれます。規定では、退職直前6か月以内に3か月連続して45時間以上、1か月で100時間以上、2~6か月平均で80時間以上の時間外労働が行われた場合に加え、行政機関からの指摘に従わず改善措置を行わなかった場合が該当します。
なお、長時間労働を理由に健康を害したとしても、行政機関からの改善に向けた指摘や指導がなかった場合は会社都合退職にはなりません。
退職勧奨による退職
会社から退職をすすめる退職勧奨に応じた退職は、会社都合退職として扱われます。
退職勧奨は、経営不振による人員削減や従業員の素行不良などを理由に行われますが、あくまで会社側からの説得であるため、従業員側が合意しなければ退職にはなりません。しかし、現実的には会社側が雇用を継続しないという意思表示であり、事実上の解雇であるという見方もできることから、会社都合退職として扱われています。
なお「早期退職制度」など、会社側が用意した優遇退職制度の利用は、従業員側が任意で退職したとみなされるため、会社都合退職にはなりません。
嫌がらせ等のハラスメント行為による退職
意図的な排斥や嫌がらせといったハラスメント行為を理由とした退職も、会社都合退職の一種です。社内の地位や性差などを利用した理不尽な要求や行動は、それを許した会社側にも責任があると考えられ、会社都合の退職として扱われます。
なお、近年のハラスメントは多種多様な概念が生まれており、明確な定義が困難です。そのためハラスメントと認められる行為が増えている一方、嫌だと感じた行為がハラスメントに該当しないケースも少なくありません。
従業員はあらかじめ地方労働局などの機関に相談することで、適切なアドバイスを受けられると期待できます。また、会社側もハラスメントの相談窓口を設けるなど社内の問題行為の解決に向けた取り組みを行うことで、ハラスメントを理由とした退職者を減らすことが期待できるでしょう。
特定理由離職者に該当
特定理由離職者とは、やむを得ない理由で会社を辞めざるを得なかった退職者を指します。特定理由離職者は主に以下の理由に該当する退職者を指し、失業給付金の制度上では特定受給資格者とほぼ同等に扱われます。
- 有期労働契約の契約更新がなかった(雇い止め)
- 辞めざるを得ない正当な理由のある自己都合退職
(障害や疾病、感覚の減退、親族の介護、結婚等による住居移転による通勤不可など)
従業員が会社都合で退社するメリット・デメリット
会社都合退職は、自己都合退職と比べどのような違いが生まれるのでしょうか。従業員の立場におけるメリット・デメリットから見てみましょう。
従業員のメリット
会社都合退職は従業員側に大きなメリットがあるといわれています。その理由のひとつが失業給付金の給付期間です。失業給付金は自己都合退職の場合、退職後7日間の待機期間に加え、さらに2か月の給付制限期間を経てようやく給付が開始されます。また受給期間が比較的短く、勤務期間が1年未満であった場合は支給なし。20年以上勤務していた場合でも最長で150日までとされています。
一方の会社都合退職には給付制限がなく、7日間の待機期間経過後すぐに支給が開始されます。支給期間は自己都合退職時よりも長く設定されており、1年未満の勤務期間であっても90日間の支給あり。20年以上勤務した45歳以上60歳未満の対象者は最大330日支給と優遇されているのです。
また、会社によっては失業給付とは関係なく、退職金の額を増額する場合もあります。多くの場合、自己都合退職に比べ多額の退職金や失業給付を受け取れるため、従業員にとってメリットが大きいといわれています。
従業員のデメリット
一方、前職を会社都合で退職した場合、次の会社への転職活動に悪い影響を与えるケースが考えられます。解雇や退職勧奨での退職は、従業員本人に何らかの問題があったためではないかと疑われるケースは少なくありません。
倒産や事業所の撤退など本人の責によらない退職だったとしても、本人が会社の経営に影響を及ぼすポジションにいたとみなされると、経営判断に難ありと判断されてしまう場合も考えられます。
また、そこまで極端ではなくても、面接時に退職理由を深掘りされやすくなるため、十分な受け答えができるような対策は求められます。
会社側が従業員を会社都合で離職させるメリット・デメリット
一方の会社側にとって、会社都合退職は何らかのメリット・デメリットが生じるのでしょうか。
会社側のメリット
会社都合による従業員の退職は、素行に問題がある社員の排除や、人員整理による経営計画上の問題解決を図れるといった点にメリットがあります。
ただし、労働契約法第16条において「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められており、会社側が自由なタイミングで従業員を解雇することはできません。事実上の解雇といわれる退職勧奨においても、最終的には”労使双方の合意”が必要であるため、会社都合退職を用いた人員のコントロールは困難だといえます。
会社側のデメリット
雇用促進を目的とした多くの助成金制度が設けられています。それらの受給条件には多くの場合解雇に関する受給要件があり、一定期間中に解雇を行った場合には助成金を受給できず、経済的な損失を被るおそれがあります。
また、会社都合退職に至るまでの経緯によっては、従業員との間に紛争が発生してしまいます。話し合いだけで解決できずに訴訟までもつれ込んでしまうことも珍しくないため、会社にとっては社会的信用や経済的に損失が生じるリスクも考えておかなければなりません。
まとめ
会社都合退職は、従業員にとっては失業給付金の支給が早まるといった経済的なメリットがある一方、就職活動が難航する原因となってしまうリスクがあります。会社側も人員整理の手段として気軽に使えるようなものではなく、助成金支給対象からの除外や従業員からの訴訟といったデメリットは十分に考えられます。
トラブルが起きない退職は、労使双方にとって結果的に大きなメリットを生みます。誰も遺恨を残さない退職になるよう、合意を踏まえた退職の手続きを行いましょう。
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