あおり運転とは?罰則内容は?被害に遭った場合の対処法とされる前にできる予防・対策を解説!
2018年04月7日
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2級FP技能士・AFP/金融・法律ライター
離婚や損害賠償に関して調停・本人訴訟の経験あり。
経験と知識を活かし、離婚や交通事故、相続、不動産を中心に多くの記事を執筆。
トラブルには「備え」も重要という考え方から、トラブルの予防・解決に役立つ情報をわかりやすく発信中。
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自動車を運転するときに怖いのが、あおり運転です。ソニー損害保険株式会社が2023年6月に行った「2023年 全国カーライフ実態調査」によると、車を運転していて最近恐怖を感じることの第1位が「あおり運転による事故」でした。
そこで本記事では、あおり運転の罰則などを条文とあわせて紹介したうえで、予防対策や対処法も紹介します。
あおり運転に遭いたくない方はもちろん、あおり運転に遭っても身を守り、損害賠償請求をしたいという方はぜひ最後までご覧ください。
- 車間距離を詰めたり、幅寄せしたり、急ブレーキをかけるなどの行為で、他の車を威嚇・挑発する危険な運転
- 令和2年6月30日の改正道路交通法で「妨害運転」として法制化され、最大懲役3年、罰金50万円の罰則が規定された。
- 煽り運転は、重大な交通事故につながる恐れがあり、絶対にやってはならない。
- 煽り運転を受けた場合は、警察に通報するなどして、毅然とした態度で対処することが大切である。
あおり運転の定義とは?
あおり運転は一般的に使われている言葉であり、明確な定義はありません。一般的には、車間距離を詰めたり、執拗にクラクションを鳴らしたりなどの迷惑な運転行為を指すことが多いでしょう。
あおり運転が社会問題化したことを受けて、道路交通法という法律において、あおり運転は「妨害運転罪」として罰則の対象とされました。
道路交通法で新たに罰則の対象とされた妨害運転(あおり運転)とは、他の車両等の通行を妨害することを目的とする、他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法による一定の違反行為です。(道路交通法第117条の2の2第1項第8号)
道路交通法について詳しくは後述しますが、「他の車両等の通行を妨害することを目的」とされていることからして、一般には「迷惑な運転行為」と捉えておくとよいでしょう。
あおり運転の具体例
一般には迷惑な運転行為といえる「あおり運転」ですが、後述する罰則の対象となる「あおり運転(妨害運転)」は次のとおりです。
- 逆走や対向車線はみ出し(通行区分違反)
- 危機回避を目的としない急ブレーキ(急ブレーキ禁止違反)
- 車間距離を詰める(車間距離保持違反)
- 無理に進路変更をする(進路変更禁止違反)
- 左側から追越す(追越し違反)
- 他の車両の後ろからハイビームを継続する(滅光等義務違反)
- 執拗にクラクションを鳴らす(警音器使用制限違反)
- 蛇行運転や幅寄せをする(安全運転義務違反)
- 嫌がらせのために高速道路でノロノロ走る(高速自動車国道における最低速度違反)
- 高速道路で停車する(高速自動車国道等における駐停車違反)
道路交通法の改正で「あおり運転」の罰則が創設
道路交通法の一部を改正する法律の成立(令和2年6月10日法律第42号)により、「あおり運転」の罰則(妨害運転罪)が創設されました。罰則規定は、令和2年6月30日から施行されています。
あおり運転の法律関係について、詳しく解説していきます。
あおり運転の罰則が創設された背景
あおり運転の罰則が創設された背景は、あおり運転による死傷事犯等が発生しており、当時の法律では十分に罰を与えることができず、厳正な対処を求める国民の声が高まっていることなどにありました。
当時の国家公安委員長は、国会で次のように法改正の趣旨を説明しています。
しかしながら、御指摘がありました、昨年八月、常磐自動車道上で社会的耳目を集める事件が発生するなど、依然としていわゆるあおり運転が重大な社会問題となっており、厳正な対処を求める国民の声も多く寄せられたことから、今国会の法改正を行うものとしたものであります。
平成29年6月の交通死亡事故は、東名高速道路のパーキングエリアで駐車方法を非難された加害者が憤慨し、高速道路で被害者車両の進路を塞ぐ行為を執拗に繰り返したという事案です。
被害者は高速道路上での停止を余儀なくされてしまい、大型トラックから追突され、被害者家族の夫婦は死亡、子ら2人は傷害を負ってしまいました。
これを受けて警察は取締りを強化しましたが、令和元年8月にも常磐自動車道であおり運転が発生するなど大きな社会問題となり、厳正な対処を実現すべく法改正に至りました。
あおり運転の罰則の内容
あおり運転の罰則の内容は、次のとおりです。
区分 | 刑事罰 | 行政罰(行政処分) | |||||||||
妨害運転 (交通の危険のおそれ) |
3年以下の懲役または50万円以下の罰金 | 違反点数25点 免許取消し(欠格期間2年) |
|||||||||
妨害運転 (著しい交通の危険) |
5年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 違反点数35点 免許取消し(欠格期間3年) |
刑事罰
他の車両等の通行を妨害する目的で、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法による一定の違反行為をした者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。(道路交通法第117条の2の2第1項第8号)
一定の違反行為とは、「あおり運転の具体例」で紹介した運転行為です。
上記の妨害運転罪を犯したことによって道路における著しい交通の危険を生じさせた場合には、5年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます。東名あおり運転のように、高速道路で他の自動車を停止させた場合に該当する罪です。(道路交通法第117条の2第1項第4号)
妨害目的で行われる危険・悪質な違反行為を罰するものであるため、実際に事故が起きなくても罰則の対象となります。単に先を急ぐため他の車両の前に割り込んだような場合は、妨害運転罪の対象とはなりません。
行政罰(行政処分)
あおり運転(妨害運転)は、懲役や罰金などの刑事罰だけでなく、違反点数が付加され、免許の停止や取消しといった行政処分の対象にもなります。
具体的には、交通の危険のおそれがある妨害運転は違反点数25点、著しい交通の危険を生じさせた場合は違反点数35点です。(道路交通法施行令別表第2)
妨害運転(交通の危険のおそれ)は、無免許運転や酒気帯び運転と並び、一般違反行為の中で最も高い違反点数(25点)が付けられています。
妨害運転は1回でもすると免許取消し(道路交通法施行令第38条第5項第1号イ、道路交通法第103条第2項第3号)となり、交通の危険のおそれがある妨害運転は2年(道路交通法施行令第38条第6項第2号ニ)、著しい交通の危険を生じさせた妨害運転は3年(道路交通法施行令第38条第7項第1号チ)、免許を受けられなくなってしまいます(欠格期間)。
なお、前歴や累積点数がある場合の欠格期間は、交通の危険のおそれがある妨害運転は最大5年、著しい交通の危険を生じさせた妨害運転は最大10年です。
あおり運転を回避するための予防対策
あおり運転に遭わないための予防対策は、思いやり・ゆずり合いの安全運転を実践することです。次のような点に気をつけましょう。
- 追い越し車線を走り続けない
- 周囲に気を配り、道を譲るようにする
- 車間距離を十分にとる
- 無理な車線変更をしない
いずれも運転の基本的なルールであり、守らなければ他のドライバーを刺激してしまう可能性があります。無理な運転をしてしまわないためにも、時間に余裕を持って移動することを意識しましょう。
また、ルームミラーやサイドミラーを利用して周囲の状況を把握することも重要です。周囲の状況を把握することによって、他のドライバーを刺激するような運転を避けられます。
無理に車線変更をしてしまったときなどは、ハザードランプを3回ほど点滅させるなどして謝る姿勢を見せましょう。
あおり運転に遭ったときの対処法
実際にあおり運転に遭ってしまったときの対処法を紹介します。
気持ちを落ち着かせて安全運転に集中する
あおり運転に遭ったときは不安定な感情になってしまいますが、できるかぎり気持ちを落ち着かせて、安全運転に集中しましょう。
不安定な感情のまま運転を続けると、自分自身が事故を起こしてしまう可能性があります。
人目の多い場所で停車する
あおり運転のドライバーが執拗についてくるときは、できる限り人目の多い場所で停車しましょう。一般道なら有人のガソリンスタンドやコンビニ、高速道路なら、サービスエリアやパーキングエリアで停車します。
人目のある場所で停車すると、通常、相手ドライバーはその場を離れてくれるはずです。また、捜査をするうえで第三者の供述があると、実際に起きた事実を認められやすくなります。
ドアをロックして110番通報をする
人目のある場所で停車しても、あおり運転のドライバーが自車まで迫ってくることもあります。その場合は、すべてのドアをロックして110番通報をしましょう。110番通報をためらう必要はありません。
また、自車まで迫ってくるような相手は落ち着いて話し合いができない状態が想定されるため、不用意に話し合いに応じないようにするのがポイントです。
車を蹴ったり殴ったりしている場合には、スマートフォンのカメラを利用して状況を撮影しておくことも検討してください。
あおり運転から自分を守るためのドライブレコーダー
あおり運転から自分を守るためには、ドライブレコーダーが重要です。
ドライブレコーダーは車両に大きな衝撃が加わった前後10秒程度の時刻、位置、映像、速度、ブレーキ操作などを記録する装置をいいます。
ドライブレコーダーがあるだけでは、あおり運転からの被害を避けられるとは限りません。しかし、警察の捜査や損害賠償請求をするうえでは、重要な証拠となります。
証拠がなければ刑事事件として処理されず、損害賠償請求も十分に認められない可能性があるため、自分を守るためにはドライブレコーダーなどによって証拠を確保することが重要です。
なお、あおり運転の罰則が制定された頃の警察庁交通局長は、違反の有無はドライブレコーダーなどの証拠に基づいて判断すると答弁しています。
あおり運転は前方だけでなく後方から行われることも多いため、後方の撮影が可能なドライブレコーダーがおすすめです。
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