証拠保全とは
あらかじめ証拠を確保しておかなければその証拠を使用することが困難となる場合に、本案事件の手続きとは別に訴訟における証拠調べの時期まで証拠を確保及び保全する手続きをいいます。
◆証拠保全の要件
証拠保全はあらかじめ証拠を調べておかなければ、その証拠を使用することが困難になる場合に行うことができます。例えば、争点となっている資料が時間がたつと消失するおそれがある、書き換えられる可能性がある。証人が病人で余命いくばくもない状態である、海外渡航予定で帰国の見込みがないといった場合です。証拠保全はかつて、医療訴訟において、医療機関によるカルテの改ざんを防ぐために利用する例が多くありました。
◆申立てのポイント
証拠保全の申立ては申立書によって行います。証拠保全の申立てがあると、申立人と裁判官の間で面接が行われます。その段階で不足していると思われる点や疑問点などは申立人が補足します。その後、裁判官が保全が必要か否かの判断を行います。証拠保全の必要性については、申立人の申し出と資料のみで判断されます。裁判官は限られた申し出内容と資料を慎重に判断するため、申立人は、申立て根拠や事実経過も含めて具体的に記載しなければなりません。資料についてもしっかり準備をすることが重要です。
◆証拠保全は迅速に実施される
証拠保全を行う必要があると判断した場合、裁判所から相手方に対し、決定書謄本、証拠調期日の呼出状、申立書副本・疎明資料等が送達されます。送達の方法として、郵送ではなく執行官が自ら目的地に赴き、書類を交付する方法をとられることが特徴的です。交付は実際の保全の30分前や1時間前など直前に行われます。証拠調べは相手の改ざんの時間的余裕を与えないために、迅速かつ内密に実施される必要があるためです。証拠保全の時刻になると裁判官や弁護士も実際に現場に赴き、対象となる証拠を調べます。証拠調べは,対象となる証拠を検証した上で,コピー機やデジタルカメラ等を利用して,その内容を書面化できるように保存するという形で行われます。証拠調べが終わると書記官が証拠調べの結果を書面にしてまとめ,証拠保全の手続は終了となります。