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【元弁護士が解説】誓約書の法的効力とは?無効なケースや正しい書き方

【元弁護士が解説】誓約書の法的効力とは?無効なケースや正しい書き方

この記事を書いた人

小林修司(元弁護士ライター)
小林修司(元弁護士ライター)
元弁護士の専業ライター。
弁護士として8年間、民事・家事・刑事事件・企業法務など幅広い分野の案件を担当。
現在は法律専門のライターとして、法的トラブルに悩む一般の方から企業法務担当者まで、幅広い読者に向けて執筆している。
難しい法律用語や制度をかみ砕き、誰が読んでも理解できる「わかりやすい法律記事」を心がけている。

「誓約書」は、約束した内容や義務を明確にし、後日のトラブルを防ぐために作成する書面です。本人が内容を確認して署名した誓約書は、約束した事実を示す証拠となり、記載内容によっては法的効力が認められます。
たとえば、入社時に秘密保持を約束したにもかかわらず会社の機密情報を漏らした場合や個人間で取り決めた約束に違反した場合には、損害賠償などを請求される可能性があります。
ただし、誓約書に署名すれば、どのような内容でも有効になるわけではありません。法律や公序良俗に反する内容などは、全部または一部が無効になることがあります。
本記事では、誓約書の法的効力や無効になるケース、正しい書き方、サインする前・した後の対処法をわかりやすく解説します。

記事の要約

  • 誓約書は一方が約束や義務を示す書面で、署名すれば内容次第で法的効力が生じる
  • 法律や公序良俗に反する内容、過度な競業避止義務などは無効になることがある
  • 作成時は誰が何を・いつまで・どの範囲で約束するかを具体的に書くことが重要
  • サインを求められたら義務や違約金をよく確認し、迷ったら署名前・後でも弁護士に相談を

誓約書とは?契約書や念書との違い

誓約書は、入社・退職時や個人間のトラブルなど、さまざまな場面で利用されます。まずは、誓約書の意味と、似た書面との違いを確認しておきましょう。

誓約書とは

誓約書とは、一方の当事者が相手方に対して、一定の約束や義務を守る意思を示す書面です。
たとえば、入社時に「業務上知った秘密を外部に漏らさない」と約束したり、個人間のトラブルで「今後は特定の行為をしない」と約束したりする場合に利用されます。
法律上、「誓約書」という名称の書面に特別な効力が与えられているわけではありません。実際の法的効力は、書面に記載された内容などによって判断されます。

「契約書」「念書」「同意書」「覚書」との違い

誓約書と似た書面との主な違いは、以下のとおりです。

書面 主な特徴
誓約書 一方が相手方に対して、一定の約束や義務を守る意思を示す
契約書 当事者双方が合意した内容を記載する
念書 約束した内容や確認事項を記録し、一方から相手方へ差し入れることが多い
同意書 特定の事項について同意したことを示す
覚書 当事者間で合意・確認した事項を記録する

特に大きな違いは、誓約書は一方が約束する形で作成されるのに対し、契約書は当事者双方の合意を記録するために作成される点です。
一方、念書は誓約書と性質が似ており、実務上、両者を明確に区別する基準があるわけではありません。同意書も、何らかの事項について本人が同意した事実を残すことを主な目的としています。また、覚書は当事者双方で取り交わす点で契約書に近く、契約書の内容を補足したり、合意事項を簡潔に記録したりする際に用いられます。
ただし、書面の法的効力は名称だけで決まりません。どのようなタイトルであっても、記載された内容や当事者の意思などを踏まえて判断されます。

誓約書には記載内容に応じた法的効力がある

誓約書は、単なる「口約束のメモ」ではありません。内容によっては、約束した義務を果たすことを求めたり、違反によって生じた損害の賠償を請求したりする根拠となります。
ここでは、誓約書にどのような法的効力があるのかを解説します。

本人の署名がある誓約書は約束した事実を示す証拠になる

本人が署名した誓約書は、「誰が、どのような内容を約束したのか」を示す証拠になります。
口約束だけでは、後になって「そのような約束はしていない」と争われることがあります。誓約書として内容を書面に残しておけば、トラブルになった際にも約束の存在や内容を証明しやすくなります。
なお、押印がないからといって、誓約書が直ちに無効になるわけではありません。本人の署名があることは、その人が書面を作成したことを証明するうえで重要な意味を持ちます。

誓約書に書けばどのような約束でも法的効力が生じるわけではない

本人が署名していても、誓約書に記載されたすべての内容が有効になるわけではありません。
たとえば、法律に違反する内容や公序良俗に反する内容は、全部または一部が無効になる可能性があります。また、入社・退職時の誓約書で従業員に過度な義務を負わせている場合にも、効力が否定されることがあります。
なお、具体的にどのような誓約書が無効になるのかは、こちらで詳しく解説します。

誓約書に違反すると損害賠償などを請求される可能性がある

有効な誓約書に違反すると、約束した義務を果たすよう求められたり、相手に生じた損害について賠償を請求されたりすることがあります。
たとえば、秘密保持を誓約した従業員が会社の機密情報を外部に漏らし、それによって会社が損害を受けたようなケースです。この場合、誓約書の内容や実際に生じた損害などをもとに、損害賠償責任を負うことがあります。
一方、誓約書を破ったこと自体を理由に、直ちに刑事罰を受けるわけではありません。
また、「違反したら100万円を支払う」と書かれていても、その金額を当然に支払わなければならないとは限りません。
違約金などの定めが有効かどうかは、誓約書の内容や適用される法律を踏まえて個別に判断されます。

誓約書が利用される主なケース

誓約書は、個人間のトラブルから会社と従業員との関係まで、幅広い場面で利用されています。ここでは、代表的なケースと誓約書に記載される内容を紹介します。

個人間トラブル

個人間では、不倫や離婚、金銭トラブルなどで、相手との約束を明確にするために誓約書が利用されます。

浮気・不倫|不倫関係の解消や接触禁止

浮気や不倫が発覚した際に、配偶者や不倫相手から誓約書を取得するケースがあります。
たとえば、「今後は不倫をしない」「不倫相手と連絡・接触しない」といった内容です。再発防止のため、約束に違反した場合の違約金を定めることもあります。
ただし、違約金を定めれば、必ずその全額を請求できるわけではありません。金額が著しく高額であるなど、内容によっては効力が否定されることもあります。

離婚・男女トラブル|接触禁止などの約束

離婚や男女間のトラブルでは、「今後は相手に連絡しない」「自宅や勤務先に近づかない」などの約束を誓約書に残すことがあります。
ただし、慰謝料や財産分与、養育費など、双方の合意が必要な事項については、一方が約束する誓約書よりも、離婚協議書や合意書などを作成する方が適しているでしょう。

金銭トラブル|借金の返済や支払期限の約束

借りたお金について、「〇月〇日までに返済する」「毎月〇万円ずつ支払う」などの約束を書面に残すケースもあります。
ただし、金銭の貸し借りでは、返済義務や返済条件を明確にするため、借用書や金銭消費貸借契約書を作成する方法が一般的です。

ビジネス・雇用関係

会社では、従業員や取引先に一定の義務を守ってもらうため、入社・退職時などに誓約書を利用することがあります。

入社・在職中

入社時には、就業規則や服務規律を守ること、業務上知った秘密を外部に漏らさないことなどを誓約するケースがあります。
また、在職中に重要な機密情報を扱うことになった場合などに、改めて秘密保持や情報管理に関する誓約書への署名を求められることもあります。

退職時

退職時には、顧客情報や営業秘密を持ち出さないこと、退職後も秘密保持義務を守ることなどを誓約するケースがあります。
また、「一定期間は競合他社に転職しない」といった競業避止義務や顧客・従業員の引き抜きを禁止する内容が盛り込まれることもあります。
ただし、退職後の行動を過度に制限する誓約は、署名していても法的効力が認められない場合があるため注意が必要です。

取引・業務委託

取引先や業務委託先に対して、業務を通じて知った秘密情報を第三者へ漏らさないことなどを誓約してもらうケースもあります。
なお、双方が秘密保持などの義務を負う場合には、一方から差し入れる誓約書ではなく、秘密保持契約(NDA)などの契約書を締結する方法が適しています。

誓約書が無効になる3つのケース

誓約書に署名したからといって、記載された内容をすべて守らなければならないとは限りません。法律に反する内容などは、誓約書の全部または一部が無効になることがあります。
実際に効力が争われ、裁判で無効と判断されるケースもあります。ここでは、誓約書の法的効力が認められない主なケースを3つ紹介します。

法律に違反する内容が定められている

法律上、当事者の合意によって変更できないルールに反する内容は、誓約書に記載しても効力が認められません。
たとえば、会社が従業員に「途中で退職したら違約金として100万円を支払う」と誓約させるケースです。労働基準法16条では、労働契約に違反した場合の違約金や損害賠償額をあらかじめ定めることを禁止しています。
ただし、従業員が故意や過失によって実際に会社へ損害を与えた場合まで、損害賠償請求が一切できなくなるわけではありません。あくまで、違約金や損害賠償額を事前に決めておくことが禁止されています。

公序良俗に反する内容が定められている

誓約書の内容が「公序良俗」に反する場合も、民法90条によって無効となります。
公序良俗とは、簡単にいえば、社会の基本的なルールや道徳に反しないことです。たとえば、一方に著しく不合理な負担を負わせる約束などは、具体的な事情によって公序良俗違反と判断されることがあります。
当事者が納得して署名した誓約書であっても、社会的に許容できない内容にまで法的効力が認められるわけではありません。

競業避止義務などで行動を過度に制限している

入社時や退職時の誓約書には、「退職後は競合他社で働かない」などの競業避止義務が定められることがあります。
ただし、会社には営業秘密などを守る必要がある一方、従業員には職業を自由に選ぶ権利があります。そのため、競業避止義務を定めれば無条件に有効になるわけではありません。
有効性を判断する際には、会社が制限を設ける必要性のほか、従業員の地位、禁止される期間・地域・業務の範囲、制限に対する代償措置などが考慮されます。
たとえば、退職後に長期間にわたって広範な業種への転職を禁止するなど、従業員に過度な制限を課す内容であれば、誓約書に署名していても裁判で効力が否定されることがあります。

誓約書の書き方|効力のある誓約書にするポイントと注意点

誓約書を作成する際は、誰が何を約束するのかを明確にすることが大切です。内容が曖昧だったり、法律に反する条項が含まれていたりすると、トラブルが起きた際に期待した効力を得られないことがあります。
ここでは、誓約書を作成する際に押さえておきたいポイントを紹介します。

誰が誰に対して誓約するのかを明確にする

まずは、誓約する人と誓約を受ける人を明確にします。個人であれば氏名、法人であれば会社名などを正確に記載しましょう。
誰が義務を負うのかが特定できなければ、後から誓約書に基づいて責任を追及することが難しくなるおそれがあります。

守るべき約束・義務を具体的に記載する

誓約する内容は、できるだけ具体的に記載しましょう。
たとえば、秘密保持について単に「会社の秘密を漏らさない」とするだけでは、何が秘密に当たるのかが曖昧です。対象となる情報や禁止する行為を具体的にしておけば、当事者間の認識のずれを防ぎやすくなります。

義務を負う期間・期限・範囲を明確にする

約束の内容だけでなく、「いつまで」「どの範囲で」義務を負うのかも明確にします。
たとえば、金銭の支払いなら金額・支払期限・支払方法、秘密保持や競業避止なら対象となる情報や期間・地域などを記載します。
条件を具体的にすることで、誓約した側も自分が守るべき義務を把握しやすくなります。

違反した場合の対応を法律に反しない範囲で定める

必要に応じて、誓約に違反した場合の損害賠償などについて定めることも考えられます。
ただし、高額な違約金を設定すれば、そのまま全額を請求できるとは限りません。特に雇用関係では、前述した労働基準法16条などに注意が必要です。
相手に約束を守らせることだけを重視して、過度な負担を課す内容にならないようにしましょう。

作成日を記載して本人が署名する

誓約書には作成日を記載し、誓約する本人が署名します。本人の署名があれば、後から「自分が作成した書面ではない」と争われた際にも、本人が作成したことを証明しやすくなります。
なお、押印がなくても誓約書が直ちに無効になるわけではありません。大切なのは、誰がいつ、どのような内容を誓約したのかを書面から確認できるようにしておくことです。

誓約書を適切に保管する

作成した誓約書は、紛失や改ざんがないよう適切に保管しましょう。誓約した本人にも控えを渡しておけば、双方が同じ内容を確認できます。

ここまでで、効力のある誓約書を作成するポイントを解説しました。
とはいえ、実際に自分で対応できるか不安な方や、いざという時のために専門家のサポート体制を整えておきたい法人・個人事業主の方は、弁護士保険への加入も検討してみてはいかがでしょうか。保険会社によっては、契約書のリーガルチェックなど法務サービスが付帯しているプランもあります。

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誓約書へのサイン前後の対処法

会社やトラブルの相手方から誓約書を提示された場合、内容を十分に確認してからサインすることが大切です。
一方、すでにサインしてしまった場合でも、誓約書の内容や署名した経緯によっては、効力を争えることがあります。ここでは、サインする前と後に分けて対処法を解説します。

サインする前に確認すべきポイント

誓約書へのサインを求められても、内容を確認しないまま署名するのは避けましょう。特に、次の点を確認してください。

自分が負う義務の内容・期間・範囲を確認する

まず確認したいのが、「何をしなければならないのか」「何をしてはいけないのか」という義務の内容です。
秘密保持や競業避止などの義務がある場合は、対象や期間、範囲まで確認しましょう。「一切」「永久に」など範囲が広すぎる表現が使われている場合は、思わぬ不利益を受けるおそれがあります。

違約金・損害賠償に関する内容を確認する

誓約に違反した場合の違約金や損害賠償についても確認が必要です。
「違反したら○万円を支払う」などの記載があれば、金額だけでなく、どのような場合に支払義務が生じるのかまでチェックしましょう。

不明点や納得できない条項はサインする前に確認・交渉する

意味がわからない条項や、自分に著しく不利だと感じる内容があれば、そのままサインせず、相手に説明を求めましょう。
内容によっては、条項の修正や削除を求めることも選択肢のひとつです。法的な意味や不利益を自分で判断するのが難しければ、署名前に弁護士へ相談すると安心です。

サインしてしまった後の対処法

「よく確認せずサインしてしまった」「断れない状況で署名してしまった」という場合でも、まずは落ち着いて誓約書の内容と署名時の状況を確認しましょう。

誓約書の内容と法的効力を確認する

最初に、手元の誓約書を確認し、自分がどのような義務を負っているのかを整理します。
署名があっても、法律や公序良俗に反する条項、過度な競業避止義務などは無効になることがあります。「サインしたから絶対に従わなければならない」と決めつける必要はありません。

強要されてサインした場合は署名時の状況がわかる証拠を残す

相手から脅されて署名した場合など、民法上の「強迫」に当たるときは、その意思表示を取り消せる可能性があります。
メールやLINE、録音など、署名を求められた際の状況がわかる証拠は削除せずに保存しておきましょう。
ただし、「会社から強くサインを求められて断りにくかった」といった事情だけで、当然に取り消せるとは限りません。

違約金・損害賠償を請求されてもすぐに支払わない

誓約書に違反したとして、相手から高額な違約金や損害賠償を請求されることもあります。
しかし、誓約書に金額が記載されているからといって、その全額を当然に支払う必要があるとは限りません。条項自体が有効なのか、請求の根拠や金額が妥当なのかを確認したうえで対応してください。

自分で判断できない場合は弁護士に相談する

誓約書の法的効力は、記載内容だけでなく、作成された経緯や当事者の関係などによっても判断が変わります。
特に、強要されて署名した、高額な損害賠償を請求された、退職後の転職を制限されているといったケースでは、自分だけで判断するのが難しいこともあるでしょう。
弁護士に相談すれば、誓約書や個々の条項が有効なのか、相手の請求に応じる必要があるのかを確認したうえで、状況に応じた対応についてアドバイスを受けられます。
弁護士費用の負担が不安な方は、弁護士費用の一部または全額を補償する「弁護士保険」への加入を検討しても良いでしょう。

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まとめ

誓約書には、記載された内容に応じた法的効力があり、本人が署名した書面は、裁判になった際に約束の内容を示す重要な証拠にもなります。ただし、署名したからといって、すべての条項が有効になるわけではありません。法律や公序良俗に反する内容などは、効力が認められないことがあります。
誓約書を作成する場合は、約束する内容や期間、範囲を明確にし、法律に反する条項がないか確認することが大切です。反対に、サインを求められた場合は、自分が負う義務や違約金、損害賠償などをよく確認しましょう。
誓約書の内容に疑問がある場合や、すでにサインしてトラブルになっている場合は、自分だけで判断せず、弁護士に相談することをおすすめします。

誓約書に関するよくあるご質問

誓約書に署名したら、書かれた内容は必ず守らなければなりませんか?

署名しても、すべての条項が有効になるとは限りません。

法律や公序良俗に反する内容などは、無効になることがあります。

押印のない誓約書は無効になりますか?

押印がなくても、直ちに無効になるわけではありません。

本人の署名があれば、書面を作成した事実を示す証拠になります。

誓約書に違反するとどうなりますか?

有効な誓約書に違反すると、義務の履行や損害賠償を求められることがあります。

ただし、直ちに刑事罰を受けるわけではありません。

よく確認せずにサインしてしまった場合、対処する方法はありますか?

まずは内容と署名時の状況を確認しましょう。

無効になる条項もあるため、判断が難しい場合は弁護士に相談すると安心です。

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