離婚調停中に異性と会うのは不貞行為になる?慰謝料を請求できるケースも解説
2024年10月3日
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この記事を書いた人

- 大学を卒業後、地方新聞社で経済、行政記者として活動する。法律分野については、通信制大学での勉強のほか、フリーランスとして弁護士事務所の案件をこなす中で目覚める。2024年度の行政書士試験に合格
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「離婚調停中の状況にもかかわらず、配偶者が異性と交際している。聞くところによると、どうやら肉体関係もあるようだ」
離婚調停に臨んでいる人の中には、そのような悩みを抱えている方も少なくありません。そのような悩みを抱える中で、「離婚調停中に異性と会うのは、不貞行為になるのだろうか」と考える時もあるのではないでしょうか。
結論から申し上げると、離婚調停中に肉体関係を伴いながら異性と会うのは法定離婚事由に該当する不貞行為になり、相手配偶者に慰謝料請求できる可能性があります。
ただし、離婚調停中に異性に会う行為のすべてが不貞行為になるわけではありません。婚姻関係が破綻しているかどうかによって、不貞行為に認定されるかどうかが異なります。
そこで本記事では、離婚調停中に異性と会うのが不貞行為にあたるかどうかについて改めて説明した後、異性と会っている事実が発覚して慰謝料請求できる場合について解説します。離婚調停中に異性と会うリスクや離婚調停を弁護士に依頼するメリットについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
記事の要約
- 離婚調停中であっても、肉体関係を伴いながら異性と会うのは慰謝料の支払い義務を負う可能性がある
- 一方の配偶者が婚姻関係の修復を望んでいる場合や離婚調停前から不貞行為の事実がある場合は慰謝料請求できる可能性がある
- 離婚調停中に異性に会うのは裁判官や調停委員が抱く心証が悪くなり、離婚条件の取り決めで不利に働く
- 離婚調停を弁護士に依頼すると、裁判所での手続きを一任してもらえ、調停を迅速かつ適正に進められる
離婚調停とは?
離婚調停とは、夫婦間での離婚の話し合いがまとまらないとき、家庭裁判所で裁判官と2人以上の調停委員を交えて離婚について話し合う手続きです。正式名称を「夫婦関係調整調停」と呼びます。
離婚調停では、呼出日に離婚を望む夫または妻が、調停委員らの助言を受けながら、離婚やその条件について話し合います。話し合いは直接顔を合わせる必要がありません。そのため、相手が話し合いに応じない時や互いに提示する離婚条件がかけ離れている時でも冷静に話し合えます。
離婚調停は費用が計2200円(申立手数料1200円と郵便切手1000円程度)とわずかです。調停そのものも裁判のように堅苦しい雰囲気ではなく、傍聴人もいないため気軽に利用できます。
離婚調停中に異性と会うのは不貞行為になる?
まずは、離婚調停中に異性と会うのが不貞行為にあたるどうかについて、改めて解説します。
肉体関係を伴いながら異性と会うのは不貞行為になりうる
不貞行為(浮気・不倫)とは、夫婦・婚約・内縁関係にある男女のどちらかが、配偶者以外の異性と性的関係を結ぶ行為です。貞操義務違反とされており、民法第770条第1項に規定された法定離婚事由として認められています。
離婚調停中でも、婚姻関係にある男女は離婚が成立していない以上、貞操義務を負っています。そのため、離婚調停中であっても、肉体関係を伴いながら異性と定期的に会っている配偶者は不貞行為を働いたとして、慰謝料の支払い義務を負う可能性があります。
不貞行為になるかどうかは婚姻関係が破綻しているかどうかによる
離婚調停中の肉体関係や交際が不貞行為になるかどうかは、婚姻関係が破綻しているかどうかによります。
例えば、配偶者が第三者と肉体関係を持った時、すでに婚姻関係が破綻している場合は、不貞行為に当たりません。逆に婚姻関係が破綻していない場合、肉体関係を持った配偶者は有責配偶者となり、慰謝料請求義務を負います。
婚姻関係が破綻しているかどうかは、以下のような事情から総合的に評価されます。
- 別居の有無
- 別居の目的
- 別居の期間
- 別居後に交流があるかどうか
- 別居後に関係を修復する動きがあるかどうか
- 離婚意思が具現化しているか
これらの事情を総合的に勘案し、「今後婚姻関係の修復が困難または著しく困難」と判断される場合は、婚姻関係が破綻しているとみなされます。
離婚調停中に異性と会っている事実が発覚したら慰謝料は請求できる?
離婚調停中に異性と会っている事実が発覚した場合に慰謝料を請求できるかどうかは、状況に左右されます。
そこで本記事では、以下の4つのケースに分けて慰謝料を請求できるかどうか解説します。
- 離婚に合意している場合
- 夫婦の別居期間が長期化している場合
- 一方が婚姻関係の修復を望んでいる場合
- 離婚調停前から不貞行為の事実がある場合
ぜひご参考にしてください。
離婚に合意している場合
離婚に双方が合意している場合は婚姻関係が破綻していると判断されるため、慰謝料を請求できません。
慰謝料を請求するためには、一方の配偶者が離婚原因を作った有責配偶者であることが必要条件です。しかし、離婚協議書への締結や口頭でのやり取りなどを通じて離婚合意後であれば、交際相手ができても有責配偶者にならず、慰謝料請求義務を相手配偶者に課せません。
夫婦の別居期間が長期化している場合
夫婦の別居期間が長期化している場合は婚姻関係の破綻が認められ、慰謝料を請求できません。
婚姻関係の破綻が認められる別居期間の目安は3〜5年ほどです。その根拠の1つには、1996年の「民法の一部を改正する法律案要綱」があります。同要綱では、結婚の目的に反する5年以上の別居が法律上の離婚原因の1つとして提案されています。しかし、実際の裁判では、3年程度の別居期間で婚姻関係が破綻していると判断されるケースが大半です。
このように夫婦の別居期間が長期化している場合は婚姻関係の破綻が認められます。しかし、別居に正当な理由がある場合はその事実があっても婚姻関係の破綻が認められません。婚姻関係の破綻が認められない正当な理由は次の通りです。
- 勤め先の都合による配偶者の単身赴任
- 病気やケガによる配偶者の長期入院・治療
別居に正当な理由があり、婚姻関係の破綻が認められない場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。
一方が婚姻関係の修復を望んでいる場合
どちらか一方が離婚を望んでいても、もう一方が婚姻関係の修復を望んでいる場合は婚姻関係の破綻が認められず、不貞行為による慰謝料を請求できる可能性があります。
離婚調停で慰謝料請求を求めるうえでの立証責任は、婚姻関係の存在を証明したい側に課されます。立証責任を課された配偶者は、以下のような事実を調停委員に説明しなければなりません。
- 同居しており、性生活にも問題がない事実
- 家族行事や家族旅行などを計画し、家族関係が改善された事実
- 配偶者のどちらか一方が病気や障害を負った時、もう一方が介護・看病している事実
- 同居を再開し、離婚に向けた協議をやめた事実
立証責任を課された側の配偶者がこれらの事実を説明し、婚姻関係が破綻してない事実を証明した場合は、相手配偶者への慰謝料請求が認められます。
離婚調停前から不貞行為の事実がある場合
離婚調停前から不貞行為の事実がある場合は慰謝料を請求できる可能性があります。離婚調停前からの不貞行為は、法定離婚事由になり得るためです。
法定離婚事由に該当する行為をして離婚原因を作り出した配偶者は有責配偶者に認定されます。そのため、慰謝料を請求できる可能性が高いといえるでしょう。
離婚調停中に異性と会うリスク
離婚調停中に異性と会うリスクは、次の3つです。
- 裁判官や調停委員が抱く心証が悪くなる
- 有責配偶者となり離婚が困難になる
- 不貞慰謝料の支払い義務を負う
このようなリスクを抱えるため、離婚調停中に異性と会う行為は、調停の話し合いを進めるうえで、不利になります。離婚調停中に恋愛をしたい方は、その事実を十分に理解しておく必要があるでしょう。
裁判官や調停委員が抱く心証が悪くなる
離婚調停中に異性と会うのは肉体関係がなくとも、それが明らかになれば、裁判官や調停委員が抱く心証が悪くなるリスクがあります。
調停委員に「親権者として適格性がない」「不真面目だ」と悪い心証を抱かれると、調停委員を味方につけられません。結果として、調停時に不利な離婚条件を提示されてしまうでしょう。
離婚調停は、裁判所を巻き込んだ家事事件です。当事者の主張を適用して白黒をはっきりさせる離婚裁判ではないとはいえ、離婚調停中は節度ある生活が求められます。その点には、十分に留意する必要があるでしょう。
有責配偶者となり離婚が困難になる
離婚調停中に異性に会うと、有責配偶者となり、離婚が困難になるリスクがあります。
有責配偶者とは、民法770条1号ないし3号、5号に定められた離婚原因にあたる事実、婚姻関係を破綻させる行為をした配偶者、婚姻関係の破綻に帰責性のある配偶者です。有責配偶者に認定されると、相手配偶者が拒否していれば、原則的に有責配偶者側からの離婚が認められません。
このような法的背景により、離婚調停中に異性に会うのはリスクが大きい行為といえるでしょう。
もちろん、裁判所が「悪意の遺棄」や「回復の見込みがない強度の精神病」といった別の法定離婚事由で、離婚調停前に婚姻関係が破綻していたと認めるケースならば別です。しかし、離婚調停中でも異性との密会が夫婦関係を修復する可能性を失わせたといえる場合、有責配偶者と認められることは避けられません。
不貞慰謝料の支払い義務を負う
離婚協議中に異性と会うのは、不貞慰謝料の支払い義務を負うリスクがあります。
配偶者が不貞行為をした場合の慰謝料の相場は、婚姻関係が破綻したかどうかによって異なります。婚姻関係が破綻した場合は150〜300万円程度、婚姻関係が破綻しなかった場合は50〜100万円程度です。ただし、不貞行為の頻度や期間、態様(同居の有無など)によっては、慰謝料が相場より高くなる場合もあります。
親権争いで不利になる可能性がある
離婚協議中に異性と会うのは、親権争いで不利になる可能性があります。
親権争いで不利になりやすいのは父親です。親権争いでは、乳幼児の母性優先や監護の継続性を維持する関係により、父親より母親の方が実際の子どもの養育に適切だと裁判官や調停委員に判断されやすいためです。
そうしたなか、異性と会うために、子どもの養育に向き合う時間が少なかったなどの事情が加われば、父親は親権争いでますます不利な立場に追い込まれてしまうでしょう。
一般的には、親権者の判断で離婚の有責性はほとんど考慮されません。不貞行為により有責配偶者になっても、もう一方の配偶者が子どもを監護する能力や意欲に著しく欠けていれば、親権者になりえます。しかし、子どもの養育にマイナスの影響を及ぼしている場合には、不貞行為が、親権者を決定するうえで十分に考慮されるでしょう。
離婚調停中に会うだけなら法的な問題は生じない?
離婚調停中は配偶者以外の異性と会うだけ、連絡を取り合うだけなら不貞行為にあたらず、法的な問題が生じません。
しかし、不貞行為をしていなくても、第三者の異性との密会が発覚した場合は、「不貞行為をしたのではないか」と疑われる可能性があります。その結果、離婚調停が紛糾し、長期化してしまう恐れがあるでしょう。場合によっては、調停委員の心証が悪くなり、財産分与や養育費の決定といった離婚条件の取り決めで不利に働いてしまう場合も考えられます。
なお、キスだけであっても、その他の接触行為の態様や、それらが婚姻関係に与えた影響などから不貞行為と同等の違法性が認められる場合があります。
離婚調停を弁護士に依頼するメリット
離婚調停を弁護士に依頼するメリットは次の3つです。
- 裁判所での手続きを一任してもらえる
- 離婚調停での有効な振る舞いについてアドバイスしてもらえる
- 離婚調停後に代理人となって示談交渉してもらえる
このように、弁護士は常に依頼人の味方です。納得のいく調停離婚を実現させたい場合は、弁護士に依頼するとよいでしょう。
裁判所での手続きを一任してもらえる
離婚調停を弁護士に依頼すると、裁判所での手続きを一任してもらえます。
裁判所での手続きは、具体的に離婚調停の申立てがあります。離婚調停を申し立てる際には、以下の書類を準備しなければなりません。
- 申立書
- 事情説明書
- 連絡先等の届出書
- 進行に関する照会回答書
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)*3カ月以内に発行されたもの
- 年金分割のための情報通知書*相手配偶者に年金分割を求める場合
市区町村の役所窓口や裁判所、年金事務所は平日昼間しか開いていないため、フルタイムで働いている方にとって、これらの書類を準備するのは大きな負担です。その点、弁護士に申立て手続きを任せるのは、調停を迅速かつ適正に進めるうえでメリットが大きいといえるでしょう。
離婚調停での有効な振る舞いについてアドバイスしてもらえる
弁護士に依頼すると、離婚調停での有効な振る舞いについてアドバイスしてもらえます。
アドバイスしてもらえるのは、具体的に離婚したい理由や自分が親権者にふさわしい理由などを調停委員に効果的に伝えられる戦略的な話し方や、調停委員との向き合い方などです。また実際に離婚調停に同席し、法的根拠をもとに自分の主張を論理的に伝えるためのサポートも受けられます。
離婚調停後に代理人となって示談交渉してもらえる
弁護士に依頼すると、離婚調停後に代理人になって示談交渉してもらえます。
離婚調停では、相手配偶者と顔を合わせる必要はありませんが、離婚調停で慰謝料が決定した後は、相手配偶者に直接慰謝料を請求しなければなりません。不貞行為の慰謝料請求は必ず応じてもらえるとは限らず、精神的負担の大きい法的請求です。
その点、慰謝料請求の交渉に熟知した弁護士が示談交渉することで、直接交渉する精神的負担やわずらしさだけではなく、トラブルも回避できます。示談交渉が決裂して裁判になった場合も、スムーズに裁判の準備に移れるでしょう。
まとめ
本記事では、離婚調停中に肉体行為を伴いながら異性と会うことが不貞行為になることや、異性と会っている事実が発覚した場合に慰謝料を請求できるケースについて解説しました。
説明した通り、離婚調停中であっても異性と会うのが問題ないケースもありますが、異性に会うのは離婚調停を紛糾させる要因になり得ます。場合によっては、離婚条件の取り決めで不利に働くリスクがあるでしょう。
逆に相手配偶者が離婚調停中に異性と会っている場合は、相手配偶者を有責配偶者に認定できる可能性が高まります。そんな時に頼りたいのが、弁護士です。弁護士に離婚調停を依頼すれば、弁護士はこちらに有利な合意内容にできるよう、サポートしてくれるでしょう。
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