兄弟・姉妹が相続を放棄する手順とは?限定承認や期限、注意点も解説
2021年09月30日
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兄弟や姉妹の遺産相続を放棄したい場合には、家庭裁判所に「相続放棄」を申し立てることで亡くなった方(被相続人)の全ての遺産を放棄できます。
相続放棄は自身だけではなく自身の子供(被相続人から見た甥・姪)にも適用され、遺産に債務が多い場合や相続人同士の関係が複雑なケースでトラブルを回避する事が出来ます。
ただし撤回や取り消しが不可能で、他の相続人にも影響を及ぼす可能性があるため慎重に判断する必要があります。
本記事では相続放棄の概要や期限、兄弟や姉妹が手続きを行う時に必要となる書類や流れ、放棄するにあたっての注意点を解説していきます。
相続放棄とは?手続きの期限は被相続人が亡くなってから3ヶ月以内
相続は基本的に被相続人が亡くなったことにより自動的に開始され、相続人は相続を受諾するか拒否するかを選択することになります。
相続を受諾、被相続人の全ての遺産を受け継ぐ場合は「単純承認」となり手続きは不要です。
一方で遺産の中に債務があり金額が不明の際には、相続によって得た財産の範囲内で債務を受け継ぐ「限定承認」と呼ばれる手続きを選ぶことができます。
限定承認を希望する場合は、家庭裁判所に3ヵ月以内に申し立てを行います。
「相続しない」ことを選択する時には相続放棄で全ての遺産を放棄します。
「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つの流れを図にすると以下のようになります。
相続放棄には主に以下の3つのルールがあります。
- 被相続人に関わる全ての遺産を放棄する
- 期限は相続開始から3ヶ月以内※
- 被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に申し立てる
※相続開始から3ヶ月以内に遺産の調査を行っても、相続の判断のための資料が得られない時には期間伸長の申立てにより期間を伸ばすことができます。
相続放棄は被相続人の「全ての遺産」を放棄することから、ローンや借金といったマイナスの遺産だけではなく、被相続人のプラスの遺産(預貯金・有価証券など)も放棄してしまう事になります。
民法第919条に「相続の承認及び放棄は、(中略)撤回することができない。」と記してあることから、基本的に一度相続放棄を申し立てると撤回や取り消しが不可能となります。
慎重に検討した上で判断を行いましょう。
なお限定承認・相続放棄の申し立てを行わなかった時には、「相続を承認した」とみなされ単純承認となり遺産を引き継ぐことになります。
限定承認とは?相続放棄との違い
限定承認は、主に被相続人の債務・遺産の総額が不明である場合に「相続した遺産の範囲内で債務を受け継ぐ」という範囲を限定した相続が可能です。
ただし相続放棄は相続人のうち1人でも申請が可能であるのに対し、限定承認は相続人全員が共同で申し立てる必要があります。
他にも以下3点の相続放棄との違いがあります。
- 相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出
- 官報に公告し債権者や受遺者(遺産を受け取る人)に内容証明で催告
- 相続財産を売却する必要があるときは基本的に「競売」によって処分する
限定承認は相続人全員の同意が必要で、手続きが煩雑である事から申請件数は10年で700~900件程度となっています。
一方で相続放棄は相続の増加に伴い年々件数が増加しており、2017年には20万件を超えました。現状では限定承認1件に対し、相続放棄の件数は300件となっています。
兄弟・姉妹が相続を放棄する時の必要書類や手続きとは
兄弟・姉妹が相続を放棄する際の流れと必要な書類、手続きは以下の通りになります。
- 遺産の調査・把握
- 遺産分割協議により相続人全員で話し合う
- 相続放棄を決定
- 家庭裁判所に申し立てを行う(3ヶ月以内)
1.遺産の調査・把握・評価
被相続人の遺産全てを調査・把握します。
遺言書がある場合には遺言書の内容を参考に調査を行いましょう。ただし遺言書が必ずしも正しい内容であるとは限らず、被相続人が記載を忘れている遺産・債務がある可能性も念頭において調査を行いましょう。
被相続人が生前取引のあった銀行・証券会社・保険会社・不動産会社などに遺産の有無を確認します。金融機関などによって所定の証明書や書類が必要となります。
特に被相続人が事業を行っていた場合には、念入りに調査を行いましょう。
遺産は種類により評価方法が異なり、株式・債券などの有価証券や不動産は判断が難しい傾向にありますので、税理士・弁護士などの専門家に相談することで適正な価額が分かります。
預貯金の場合、普通預金は相続日の預入残高、定期預金は相続日の預入残高に解約した時点の利息(利率は解約利率で計算)を加え、源泉徴収分の20.315%を差し引いた額で評価します。
2.遺産分割協議により相続人全員で話し合う
相続人全員で遺産の分割方法や割合などについて話し合います。
遺言書がある場合には遺言書の内容通りに相続するケースが多いですが、遺言書で遺産分割協議が禁止されていない場合には協議により全員が合意した内容で分割しても法的には有効となります。
遺産分割協議では「相続人全員が参加、話し合った上で合意する」という点が重要で、内容がまとまった時には「遺産分割協議書」を作成します。
意見が合わない時には家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、調停委員を交えて解決に向けて話し合う流れになります。
2-1.知っておきたい法定相続人と相続分・遺留分
民法で定められた「法定相続」では、兄弟・姉妹は第3順位となり、第1順位の人も第2順位の人もいないときに相続人になります。
被相続人との関係 | 順位 |
---|---|
配偶者 | 常に相続人となる |
子供 (亡くなっている場合は孫) |
第1順位 |
父母 (亡くなっている場合は祖父母) |
第2順位 |
兄弟・姉妹(亡くなっている場合は甥又は姪) | 第3順位 |
法定相続分は例えば相続人が兄弟・姉妹と配偶者の場合、配偶者は3/4、兄弟や姉妹は1/4となります。兄弟・姉妹が2人以上の時には全員で1/4となり、1/4を原則均等に分けます。
なお最低限の取り分である「遺留分」は兄弟姉妹にはありません。
民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分であり、必ずしも法定相続分で遺産の分割をする必要はありません。
ただし法定相続人と相続分・遺留分を知っておく事で、他の相続人も含め相続においてトラブル回避に役立つことがあります。兄弟や姉妹の範囲だけでもおさえておきましょう。
3.相続放棄を決定
遺産の調査と協議を経て「相続を放棄したい」と判断した際には相続放棄の申し立てを行います。
先にも書いた通り、取り消しや撤回ができないため慎重に判断しましょう。
4.家庭裁判所に申し立てを行う
家庭裁判所に「相続放棄の申述」をするためには、以下の書類・費用が必要となります。
必要書類・費用
- 収入印紙800円分(申述人1人につき)
- 連絡用の郵便切手
申述先の家庭裁判所に金額を確認し、添付します。
https://www.courts.go.jp/courthouse/map/map_list/index.html
※上記の各裁判所のサイトに掲載されている所もあります。 - 続放棄の申述書
https://www.courts.go.jp/koufu/vc-files/koufu/2021/2021-8-2.pdf - 添付書類
1. 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
2. 相続を放棄する方(申述人)の戸籍謄本
3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
4. 被相続人の子(及び代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及び代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
5. 被相続人の直系尊属(父母・祖父母など)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に出向き、手続きを行いましょう。
相続放棄は「家事事件」として扱われます。各地の裁判所により受付時間は異なりますが、東京家庭裁判所では平日の9:30~12時、13時~17時の間受付を行っています。
兄弟や姉妹が相続放棄をする際の注意点
兄弟や姉妹が相続を放棄する時には、①他の相続人への影響、②場合によっては相続を放棄しても生命保険金は受け取れる、2点に注意しましょう。
他の相続人への影響
相続放棄を行った方は相続において「始めからいなかった」とみなされ、他の相続人の順位が繰り上がる可能性があります。
自身が相続放棄を行った場合、どのような影響があるのかを考え放棄を申し立てましょう。
放棄をした時には、兄弟や姉妹にとっての子供(被相続人から見た甥・姪)が相続人となることはありません。
場合によっては生命保険金を受け取ることが可能
兄弟・姉妹が被相続人の生命保険金の受取人に指定されていた場合、又は受取人が法定相続人と定められているケースでは相続を放棄しても保険金を受け取る事が出来ます。
生命保険金は「みなし相続財産」という「被相続人が亡くなったことにより相続財産としてみなされるもの」であり、民法上相続財産ではない事が理由です。
受け取った生命保険金には相続税又は贈与税・所得税が課される可能性があります。税金の種類は保険料負担者や契約者によって異なります。
まとめ
相続の流れと単純承認・限定承認・相続放棄、兄弟や姉妹が相続を放棄する際の手続きや必要書類、注意点を解説しました。
相続放棄を検討する際には、他の相続人への影響や取り消しができない事を踏まえ、債務・遺産の価額や種類などを把握し慎重に判断するよう心がけましょう。
手続きには収入印紙や自身の戸籍謄本に加え、被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本などが必要となります。この記事を参考に必要書類を集め、手続き方法を確認しておきましょう。
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