医療過誤の実例と判断基準|具体例から学ぶ防止策と対応ポイント
2025年01月17日
▲関連記事をチェック

この記事を書いた人
- 法律事務所で債務整理、交通事故、離婚、相続など幅広い案件を担当。その後、メーカーの法務部で企業法務に従事し、実務経験を積む。事務所勤務時にはウェブサイト立ち上げにも関わり、現在は法律分野を中心にフリーランスのライター・編集者として活動。専門知識を活かし、正確で分かりやすい情報提供に努めている。
最新の投稿
事故2025.01.17医療過誤の実例と判断基準|具体例から学ぶ防止策と対応ポイント
医療過誤は、患者やその家族にとって深刻な問題です。病院や医療従事者のミスが原因で予期せぬ結果が生じた場合、法的責任が問われます。本記事では、医療過誤の基礎知識や、過去の判例をもとにした具体例を解説し、適切な対応のポイントを紹介します。
記事の要約
- 医療過誤とは、病院や医療従事者のミスによって患者に予期せぬ損害が生じることを指す。
- 医療過誤の法的責任には、民事責任、刑事責任、行政責任の3つがある。
- 医療過誤を問うには、過失、損害、因果関係の3つを証明する必要がある。
- 医療過誤訴訟では、診療記録の分析や医療調査が重要で、解決まで長期間を要することが多い。
医療過誤とは?基準と法的判断の基礎知識
医療過誤とは、医療行為に関連して予期せぬ結果が生じ、その原因が病院や医療従事者のミスである場合を指します。
たとえば、手術で間違った部位を処置したり、薬の量を誤った結果、患者が傷害を負ったり亡くなったりした場合が該当します。
医療過誤による3つの法的責任
医療過誤が発生すると、病院や医療従事者には主に3つの法的責任が問われることがあります。
1.民事責任
病院に対して損害賠償を請求する責任です。
医療過誤により患者が後遺症を負ったり、死亡した場合、治療費や慰謝料、逸失利益(将来得られるはずだった収入など)の賠償を求めることができます。
2.刑事責任
医療従事者が刑罰を受ける場合です。
患者に傷害を与えたり死亡させたりした場合、業務上過失致死傷罪が適用されることがあります。この罪が認められると、5年以下の懲役や100万円以下の罰金が科される可能性があります。
3.行政責任
医療従事者に対する免許の停止や取り消しなどの処分です。
厚生労働省が、戒告や3年以内の業務停止、医師免許の取り消しなどの措置を行う場合があります。これは、医療従事者が罰金刑以上の判決を受けた場合などに適用されることがあります。
民事責任を問うための条件
医療過誤における民事責任を問うには、次の3つの条件を満たす必要があります。
1.病院側に過失があること
過失とは、予防可能なミスを回避しなかったことです。
たとえば、症状や検査結果から適切な治療が必要だったのに、それを怠った場合がこれに該当します。この過失を証明するには、カルテや検査結果といった証拠の収集が重要です。
2.患者に損害があること
医療過誤による損害には、治療費、慰謝料、通院交通費、将来の介護費用などが含まれます。
患者が亡くなった場合、遺族がこれらの賠償を請求することも可能です。また、遺族自身が受けた精神的苦痛について慰謝料を求めることもできます。
3.医療行為と損害に因果関係があること
因果関係とは、「その医療行為がなければ損害が発生しなかった」と言える関係性のことです。
たとえば、「手術中のミスがなければ患者が亡くなることはなかった」と証明する必要があります。この因果関係については裁判で争われることが多いです。
医療過誤が問題となった事例集
ここでは、医療過誤が問題となった事例について解説します。医療過誤が認定された事例と、医療行為が正当であった事例をそれぞれ紹介します。
医療過誤と認定された事例|裁判で問題となったケース
この判例は、横浜地方裁判所 平成21年10月14日判決の事案です。
事件の概要
8歳の男児Aが腹痛と嘔吐で救急搬送され、急性胃腸炎と診断されて入院しました。しかし、症状は悪化し、担当医Cは異常な腹部膨満や強い痛みを無視して再検査をしませんでした。翌朝、Aは呼吸停止となり死亡。解剖で「腸間膜裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウス」が死因と判明しました。
判決の争点
- 過失の有無・・・C医師が診断を見直し、適切な検査を行うべきだったか。
- 因果関係の有無・・・適切な対応をしていれば救命可能だったか。
判決内容
判決では、「診断後の経過で症状が悪化した場合、確定診断に固執せず、再検査を実施する義務がある」との一般論が述べられました。本件では、C医師が症状悪化時に再検査をしなかったことが「注意義務違反」と認定されました。
2.因果関係について
適切な診断と開腹手術が行われていれば、Aの救命可能性が高く、後遺症も残らなかったと判断されました。
判例の重要性
本件では、確定診断後の症状悪化に応じて再検査を行う必要性が強調されました。この判例は、医師が患者の経過を注意深く観察し、診断を柔軟に見直す義務を負うことを明確に示した重要な事例です。また、医師の対応次第で救命可能なケースがあったことを浮き彫りにしました。
正当な医療行為と認められた事例|医療過誤との線引き
この判例は、大阪地方裁判所 平成25年2月27日判決の事案です。
事件の概要
子宮体がん術後に抗がん剤治療(TC療法)を受けた女性Aが、2クール目の投与中にアナフィラキシーショックを起こして死亡しました。
1クール目後、Aに皮疹が現れましたが、皮膚科医は急性アレルギーではなく湿疹と診断し、治療継続を提案。添付文書の「過敏症状があった場合には投与禁忌」という記載がありましたが、病院側は再投与を実施しました。
判決の争点
病院が皮疹をアレルギーと認識し、投与を回避すべきだったか。
2.添付文書の遵守
添付文書の記載内容を守らなかったことが過失と認められるか。
判決内容
皮疹は軽度で重篤な症状ではなく、皮膚科医も再投与を許可しており、病院側の過失は否定されました。
2.添付文書について
添付文書に記載された注意事項は一般的な指針であり、対応は合理的で過失には当たらないと判断されました。
判例の重要性
医師が合理的判断に基づいて治療を継続した場合、結果的な死亡でも過失としない点を示しています。また、医療水準や現場の実情が考慮されるべきことを強調した判例です。
医療過誤で損害賠償を求める流れ
医療過誤が疑われる場合の、損害賠償を請求するための一般的な手続きについて、以下に詳しく説明します。
1.弁護士への相談
医療過誤の問題は専門性が高く、個人で対応するのは難しいことが多いです。何か問題があったと感じたら、まずは弁護士に相談しましょう。医療過誤は特殊な分野であるため、経験豊富な弁護士を選ぶことが重要です。
2.医療調査の実施
弁護士は、まず病院の責任を判断するための医療調査を行います。調査には、診療記録の入手や分析、医学文献の確認、専門医の意見聴取などが含まれます。これらを基に、病院に法的責任があるかどうかを判断します。
3.示談交渉
調査の結果病院側の過失が認められる場合、示談交渉が行われます。病院が責任を認め、損害額について大きな争いがなければ、示談で解決することも可能です。ただし、病院側が責任を否定したり、損害額で意見が食い違ったりする場合は、示談での解決が難しくなります。
4.調停や医療ADRの利用
示談で解決しない場合は、調停や医療ADR(裁判外紛争解決手続き)を行います。調停では、裁判所で調停委員を介して話し合いします。一方、医療ADRは裁判所外の機関で進められ、専門家が仲裁に入ることが特徴です。これらの方法は裁判よりも短期間で解決できる利点があります。
5.裁判での解決
示談や調停で解決しなかった場合、最終的には裁判に進みます。裁判では、患者側と病院側がそれぞれの主張を証拠とともに提示し、それをもとに裁判所が判断します。
医療過誤を防ぐためのポイント
医療過誤で病院や医療従事者の責任を問う場合、いくつかの重要な注意点があります。
時効に注意する
医療過誤の損害賠償請求には、「時効」という期限があります。この期限を過ぎると、請求が認められなくなるため注意が必要です。
時効には大きく2つの種類があります。不法行為に基づく請求の場合、損害や加害者を知った日から5年、または医療過誤が発生した日から20年以内に行う必要があります。
一方、債務不履行に基づく請求では、権利を行使できることを知った日から5年、または権利が行使可能になった日から20年以内が期限です。
特に2020年3月31日以前の医療過誤では、旧民法が適用され、時効期間が異なるため注意が必要です。
賠償金を二重に受け取ることはできない
医療過誤の場合、病院と医療従事者の両方に対して損害賠償を請求することができます。しかし、同じ損害について、二重に賠償金を受け取ることはできません。
多くのケースでは、医療従事者の雇用主である病院を相手に訴訟を起こしますが、医師や看護師などの対応が特に不適切な場合には、個人を被告にすることもあります。
裁判の解決には時間がかかる
医療過誤の裁判は、一般的な裁判に比べて解決までの期間が長くなる傾向にあります。
医療過誤訴訟では、診療記録や専門的な医学文献、専門医による意見書など、膨大な証拠を用意する必要があります。そのため、病院側との争点整理に時間がかかり、裁判が長期化しやすいのです。
まとめ
医療過誤は誰にでも起こり得る問題ですが、冷静に適切な対応を心がけることが重要です。判例や具体的な流れを参考に、専門家の助けを借りながら、自分の権利を守るための準備をしましょう。
個人型の弁護士保険に興味がある方はこちら

保険料
2,980円/月払
身近に起こる法律トラブルが不安…
ネットトラブル・いじめ問題・離婚トラブル
ストーカー被害・金銭トラブル・ハラスメント
騒音トラブル・消費者トラブル・医療過誤 など
弁護士保険ミカタであらゆるトラブルに備えましょう!
「もしもの高額な支払いに備える」弁護士保険とは?
弁護士保険とは、弁護士に相談・依頼する際の費用を補償してくれる保険です。
保険料の相場は月額3,000円程度です。そのため、30万円という着手金の相場額を考えると、保険に加入してから9年以内に弁護士に依頼すれば、元が取れます。
現代社会は、交通事故や離婚、労働問題など、さまざまな法律問題に見舞われがちです。そうした法律問題が降りかかってきた時に、弁護士保険に加入していれば弁護士に気軽に相談・依頼ができるので、問題の早期解決につなげられるでしょう。
弁護士保険を活用すると、法律相談料や着手金を全額補償してもらえる場合があるため、金銭的な不安も解消できます。弁護士への依頼に際して金銭的な不安を解消したい方は、弁護士保険に加入することをおすすめします。
「弁護士保険ステーション」では、弁護士保険取扱会社による4つの弁護士保険の「料金」「補償」「付帯サービス」などをわかりやすく比較できます。
保険によっては、保険加入後に弁護士保険に加入していることを示す「リーガルカード」や「ステッカー」が配布されるので、トラブルの抑止効果が期待できます。
そのほか、弁護士保険では、「弁護士紹介サービス」や「相談ダイヤルの設置」など、便利な付帯サービスが用意されています。
どの保険もサービスが充実しているので、ぜひ加入を検討してみてください。
法律相談料 | 偶発事故※3 | 一般事件※4 | 通算上限金額 |
---|---|---|---|
100%※1 2.2万円/事案まで |
100%※1 300万円/事案まで |
80% 200万円/事案まで |
1,000万円 |
- ※1 実費相当額
- 単独型 弁護士保険 9年連続(2013~2021) 保有件数No1!
- 家族特約でご家族の保険料は半額!
- 弁護士費用の補償・トラブルの予防サポートサービス付保険
法律相談料 | 偶発事故※4 | 一般事件※5 | 通算上限金額 |
---|---|---|---|
なし ※1 |
70% ※2 |
70% ※2 |
1,000万円 |
- ※1 初回法律相談60分無料の弁護士を紹介
- ※2 着手金の次の①②のいずれか少ない金額
①被保険者が弁護士に支払う金額
②(基準-5万)×基本てん補割合(原則70%)
- 追加保険料0円で家族も補償
- 提携弁護士による初回60分の無料法律相談が可能
- デビットカードでの支払も対応
法律相談料 | 偶発事故※3 | 一般事件※4 | 通算上限金額 |
---|---|---|---|
100%※1 2.2万円/事案まで |
100%※2 100万円/事案まで |
100%※2 100万円/事案まで |
1,200万円 |
- ※1 実費
- ※2 保険金は(基準額 - 免責金額)×100%です。
報酬金:(基準)×50%
- 20分間の無料弁護士相談など付帯サービスが充実
- 親が加入すれば18歳未満の子は自動的に補償!
- プランごとに報酬金の補償設定あり
法律相談料 | 偶発事故※3 | 一般事件※4 | 通算上限金額 |
---|---|---|---|
実費 10万円を限度 |
実費 300万円を限度 |
補償対象外 | - |
- 保険開始から使用可能な痴漢冤罪/被害ヘルプコール付き
- 加害者になった時の対人/対物賠償保険付き
- 気軽に加入できるリーズナブルな保険料
\カンタン4社比較/