不機嫌ハラスメント(フキハラ)とは?職場での具体例・対処法を解説
「毎朝、上司の機嫌を確認してから話しかけるか決めている」
「ため息をつかれると萎縮して何も言えない」
職場でこのような問題に直面している場合、不機嫌ハラスメント(フキハラ)の被害に遭っている可能性があります。
フキハラとは、不機嫌な態度によって相手にストレスや不快感を与える行為です。
本記事では、フキハラの具体例や対処法、予防法について解説します。
記事の要約
- フキハラは、不機嫌な態度で周囲を苦しめる行為
- 証拠が残らないため被害を訴えにくい
- ケースによっては慰謝料請求が認められることもある
- 被害を受けたら記録、相談窓口などへの相談が大切
職場における不機嫌ハラスメント(フキハラ)とは?
不機嫌ハラスメント(フキハラ)とは、モラルハラスメント(モラハラ)の一種で、不機嫌な態度によって周囲にストレスや不快感を与える行為をいいます。
特徴は、暴言や暴力といった直接的な攻撃を伴わない点です。
ため息や舌打ち、無視など、不機嫌に見える行為によってほかの職員が萎縮し、職場の雰囲気を悪化させます。
職場でのハラスメントで代表的なのはパワハラですが、パワハラとは以下の点が異なります。
| パワハラ |
|
|---|---|
| フキハラ |
|
法律で定義付けされているパワハラとは異なり、フキハラは線引きが曖昧で被害を訴えにくいという問題があります。
また、加害者本人に自覚がないケースが多いことも、問題と認識されにくい理由といえるでしょう。
職場でよく見られる不機嫌ハラスメントの具体例
職場でよく見られるフキハラの具体例は以下のとおりです。
- 無言で圧力をかける
- 特定の人物だけに不機嫌になる
- やりとり中にため息・舌打ちをする
- 無視をする
- 周囲が機嫌を伺うことが日常化している
ここからは、具体例をひとつずつ見ていきましょう。
無言で圧力をかける
言葉ではなく、態度や所作で周囲に威圧感を与えるのがフキハラの典型例です。
たとえば、以下のような行動が該当します。
- 腕を組んで不満気な表情のまま会議に参加する
- 提出された書類を無言で突き返す
- 書類を机に叩きつける
問題は、言葉によるやりとりが伴わないこともあり、証拠が残りにくい点です。
また、ハラスメントと認識されづらく、問題として表面化するのに時間がかかる傾向にあります。
しかし無言の圧力が続けば周囲が萎縮し、職場の雰囲気が悪化したり業務効率の低下につながったりするおそれがあります。
特定の人物だけに不機嫌になる
ほかの社員には普通に接しているにもかかわらず、特定の相手にだけ冷たい態度や無視、素っ気ない返答を繰り返すこともフキハラに該当する行為です。
被害者は「自分だけ嫌われている」「何かしてしまっただろうか」と自己否定に陥りやすく、職場で孤立してしまうおそれがあります。
また、フキハラによる精神的苦痛が、休職や退職につながる可能性も考えられます。
やりとり中にため息・舌打ちをする
報告や相談の際にため息をつく、舌打ちをするといった行為もフキハラにあたります。
問題点は、ハラスメントと認識されにくいことです。
また、被害者も「何か言われたわけではないから」と我慢してしまいがちです。
しかし、このような行為が続くと被害者は報告や相談をためらうようになり、ミスが増えたり業務に支障をきたしたりするおそれがあります。
無視をする
以下のような、同僚や部下を無視する行為もフキハラになり得ます。
- 挨拶されても返さない
- 質問されても返さない
- 業務上のチャットや連絡を放置する
無視は、業務上必要なやりとりを意図的に断ち切る行為であり、特に業務への影響が大きいです。
被害者は通常の業務を遂行できず、仕事のやりがいや職場での居場所を失っていくおそれがあります。
また、「人間関係からの切り離し」に該当すると判断された場合、パワハラとして認定される可能性もあります。
周囲が機嫌を窺うことが日常化している
複数の職員が特定の人物の機嫌に振り回され、機嫌を窺うことが日常になっている状況もフキハラに該当します。
「機嫌が悪そうだから報告はあとにしよう」「機嫌を損ねたくないから質問はやめておこう」といった空気が広がると、必要な情報共有や意見交換まで滞りかねません。
その結果、組織全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼしたり、離職者の増加につながったりすることが考えられます。
部下からのハラスメントはこちら

不機嫌ハラスメントに該当する?被害者・加害者別チェックリスト
実際にどのような行動がフキハラに該当するのか、チェックリストで確認してみましょう。
なお、ひとつでも該当する項目がある方は、記事の後半で紹介している対処法を参考にしてください。
被害者チェックリスト
「フキハラを受けているかもしれない」という方は、当てはまるものをチェックしてください。
加害者チェックリスト
フキハラは、加害者本人が気づいていないケースも珍しくありません。
「もしかしたら加害者になってしまっているかもしれない」という方は、自分の行動を振り返りながらチェックしてください。
不機嫌な態度が処分につながった実際の事例
フキハラをめぐっては、実際に処分が下されたケースも出てきています。
それぞれの事例を見ていきましょう。
反論すると不機嫌になる|警視庁フキハラ事案
2025年12月、警視庁は当時警視正だった60代の男性幹部をフキハラ認定し、警務部長注意の処分を下しました。
部下への聞き取り調査では以下のような証言が集まり、約4年にわたって職場環境を悪化させていたことが明らかになりました。
- 反論すると不機嫌になる
- 一方的で意見を言えない
- 一度嫌われたら終わり
また、休日や深夜でも部下に連絡し、折り返しが遅いと責め立てるといった行為も確認されています。
注目すべきは、後述する仙台北警察署の事案とは異なり、パワハラではなくフキハラとして処分が下された点です。
なお、男性幹部は処分とは関係なく、翌年辞職しています。
日常的に不機嫌な態度をとる|仙台北警察署フキハラ事案
2025年8月、宮城県警は仙台北警察署長だった警視に対し、本部長注意の処分を下しました。
警視は、署長室や会議の場でため息を繰り返すなど普段から不機嫌な態度をとり、周囲に圧力をかけていたとされています。
周囲は警視が不機嫌な理由がわからないまま萎縮し、しだいに発言を控えるように。
警視庁の事案と異なるのは、フキハラではなくパワハラ認定されている点です。
2つの事案が示すように、フキハラとパワハラの境界線は明確ではありません。
同じように不機嫌な態度が問題になっていても、ケースによってどちらに認定されるかが異なります。
なお、処分を受けた警視は「申し訳ない。自覚はなかった」と話し、依願退職しています。
職場での不機嫌ハラスメントで慰謝料請求は可能?
フキハラを受けても、それだけで慰謝料請求が認められるのは難しいでしょう。
不機嫌な態度を取られたというだけでは、民法第709条が定める不法行為として認定されにくいためです。
ただし、以下のような状況が重なる場合は、慰謝料の請求が認められる可能性があります。
- 日常的なフキハラによって適応障害・うつ病を発症した(診断書がある)
- フキハラ以外にも暴言・過度な叱責など悪質な言動を伴っている
- 会社がフキハラを認識しながら放置していた(安全配慮義務違反)
- フキハラが原因で退職・休職に追い込まれた
実際に、上司による継続的な高圧的指導が指導監督の範囲を逸脱し、不当な精神的苦痛を与えた不法行為にあたるとされたケースでは、慰謝料請求の一部が認められています(東京地方裁判所 令和2年7月1日判決)。
慰謝料請求が認められるかどうかは、被害の深刻さや証拠、会社側の対応などによって変わります。
判断が難しいケースも多いため、フキハラが疑われる場合は社内の相談窓口や外部機関、弁護士などへの相談を検討してください。
職場で不機嫌ハラスメントを受けたときの対処法
職場でフキハラを受けたときは、以下の方法で対処しましょう。
- 相手の行動や感じたことを記録しておく
- 相手の機嫌に振り回されない
- 相手と物理的・心理的に距離をとる
- 自分に責任がないことには謝らない
- ひとりで抱え込まず相談する
それぞれ詳しく解説します。
相手の行動や感じたことを記録しておく
まずは、いつ・どこで・誰が・どのような行動をとったかを記録するところから始めましょう。
イライラしていて怖かった、という印象ではなく、黙って書類を突き返された、挨拶を無視されたなど、相手の行動を詳細に残すことが重要です。
その場に居合わせた人物も記録し、証言をとっておくと人事や外部機関に相談する際の根拠になるでしょう。
相手の機嫌に振り回されない
身につけたいのは、「相手の不機嫌は自分のせいではない」という考え方です。
相手に合わせて行動を変えたり機嫌を取ったりすると、かえって相手の態度をエスカレートさせてしまう可能性があります。
相手の機嫌が気になっても、自分の評価と結びつけず業務だけに集中しましょう。
「機嫌が悪い。どうしよう。自分のせいかな」などと気にせず、「また機嫌が悪いんだな」と客観的に観察する感覚を持つことで、精神的な消耗を防ぎやすくなります。
相手と物理的・心理的に距離をとる
可能な範囲で、相手との接触を最小限にすることも有効な対処法です。
たとえば、業務上の連絡をメールやチャットに切り替えたり休憩時間をずらしたりして、直接顔を合わせる機会を減らせるよう工夫しましょう。
また、必要以上に相手の感情を読み取ろうとしたり、空気を読みすぎたりすることも消耗する原因です。
業務上必要なやりとりに絞り、それ以外では心理的な関与を減らすことを意識してください。
ただし、すでに業務に支障が出ている、孤立しているという場合は、相談窓口の活用を検討してください。
自分に責任がないことには謝らない
自分のミスであれば謝罪する必要がありますが、自分に責任がなければ安易に謝罪しないようにしましょう。
過剰な謝罪は、不機嫌な態度を助長するおそれがあるためです。
普段からフキハラを受けていると、相手の機嫌を損ねないよう、自分に非がなくても反射的に謝ってしまう傾向があります。
しかし、非がないにもかかわらず謝ることは、自分が悪いと認めることにつながります。
自分を守るためにも、不要な謝罪はしないようにしましょう。
ひとりで抱え込まず相談する
フキハラに限らず、ハラスメントの被害を受けたときは誰かに相談することが大切です。
「大袈裟かもしれない」と考えてひとりで悩まず、状況を誰かに話しましょう。
仲の良い同僚や社内の相談窓口に相談するだけで、精神的な負担が軽くなることもあります。
社内で相談しにくいなら、以下のような外部機関への相談を検討するとよいでしょう。
| 相談先 | 連絡先 | 受付時間 |
|---|---|---|
| 総合労働相談コーナー | 最寄りの相談コーナー | 相談コーナーによって異なる |
| みんなの人権110番 | 0570-003-110 | 平日8:30〜17:15 |
状況が深刻な場合や慰謝料の請求や法的な対応を検討したいときは、弁護士への相談も視野に入れてみてください。
弁護士保険に加入していれば、費用を気にせず弁護士に相談しやすくなります。
詳しくは、こちらを参考にしてください。
参考元:
相談窓口のご案内|厚生労働省
みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)|法務省
不機嫌ハラスメントを防ぐためにできること
フキハラを防ぐためには、そもそもフキハラが起きにくい環境づくりが重要です。
組織としての体制作りと個人としての心がけが予防につながります。
ここでは、企業・組織と個人別に、フキハラの予防法を紹介します。
【企業・組織向け】フキハラを防ぐための体制づくり
フキハラが発生してから動くのではなく、事前に体制を整えることが大切です。
企業・組織として取り組むべきポイントは以下のとおりです。
被害の申告があったときに誰がどう動くかや、加害者への指導方法、配置転換の基準などをあらかじめ定めておくと、問題発生時にスムーズに対処できます。
相談窓口を設置していても、「誰に知られるかわからない」「相談しづらい」と思われては意味がありません。匿名で利用できる仕組みや個人情報の取り扱いルールを整備し、窓口の存在を周知することが大切です。
研修を実施することで、「自覚なく加害者になっている可能性がある」という認識を組織全体に広められます。特に管理職には、感情のコントロールや部下への影響について学ぶ機会を設けることが必要です。
【個人向け】フキハラをしないための心がけ
フキハラの多くは、本人が気づかないうちに起こります。
そのため、日ごろから自分の行動がフキハラに該当しないかを意識しながら過ごすことが重要です。
【自分の不機嫌になるパターンを知る】
疲れてくるとイライラする、忙しくなると口数が減るなど、自分がどのような状況で不機嫌になりやすいかを把握しておきましょう。自分の傾向を知ることで、コントロールしやすくなります。
イライラしているときはすぐに返信・対応せず、いったん席を外したり落ち着いてから返信したりなど自分なりの対処法を決めておきましょう。こうした習慣がアンガーマネジメント(怒りの感情をコントロールする方法)の実践につながります。
立場が上になるほど、自分の感情が職場に与える影響は大きくなります。「最近、部下からの報告や相談が減った」「会議で発言する人が少なくなった」と感じたら、普段の自分の態度を見つめ直しましょう。
まとめ
フキハラは暴言や暴力といった証拠が残りにくいことから、被害を受けても認定されにくいのが特徴です。
しかし、2025年には実際に処分が下された事例があり、ケースによっては慰謝料請求も認められる可能性があります。
フキハラだと感じたら、まずは状況を記録し、信頼できる人や外部の相談窓口に打ち明けることが大切です。
慰謝料請求や法的な対応を検討している場合は、弁護士への相談も視野に入れてみてください。
弁護士保険に加入していれば、依頼へのハードルが下がるでしょう。
不機嫌ハラスメント(フキハラ)に関するよくあるご質問
職場でみられる不機嫌ハラスメント(フキハラ)の具体例にはどのようなものがありますか?
無言で書類を突き返す、ため息や舌打ち、挨拶や連絡の無視などが典型例です。
特定の人物にだけ冷たい態度をとる行為も不機嫌ハラスメント(フキハラ)に該当します。
不機嫌ハラスメント(フキハラ)を受けた場合に慰謝料請求は可能ですか?
不機嫌な態度を取られたというだけでは認められにくいのが実情です。
ただし、適応障害の発症や会社による放置、退職に追い込まれたなどの事情が重なる場合は、認められる可能性があります。
職場で不機嫌ハラスメント(フキハラ)を受けたときの対処法はありますか?
相手の行動や感じたことを記録し、機嫌に振り回されず物理的・心理的に距離をとることが有効です。
ひとりで抱え込まず、社内の相談窓口や外部機関に相談しましょう。
加害者本人に自覚はあるものなのですか?
不機嫌ハラスメント(フキハラ)は加害者本人が気づいていないケースも珍しくありません。
日ごろから自分の不機嫌になるパターンを知り、行動が不機嫌ハラスメント(フキハラ)に該当しないか意識することが大切です。
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この記事を書いた人

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元行政書士のフリーライター。
行政書士・土地家屋調査士の補助者を約10年務めたのち、行政書士として独立。
相続・遺言や農地関係、建設業許可などの業務に携わる。
現在はフリーライターとして、相続・遺言、離婚、不動産関連の記事や資格予備校のコラムなど、日々積極的に執筆活動を行っている。
「誰が読んでもわかる記事」を常に心がけている。
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